HOKUTO編集部
6ヶ月前
CLDN18.2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃癌を対象に、 2024年3月に承認を取得した抗Claudin18.2抗体薬ゾルベツキシマブが、 5月22日に薬価収載された。 同薬は高い催吐性を持つため、 適切な制吐療法が必要とされる。 同日、 制吐薬適正使用ガイドラインチームにより対応に関する速報ガイドが提示されたため、 提言をまとめて紹介する。
HER2陰性CLDN18.2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃癌対するゾルベツキシマブ併用一次化学療法における制吐療法
❶ ゾルベツキシマブの催吐性は標的に対するon-targetの有害事象である。
❷ ゾルベツキシマブを併用する化学療法 (フッ化プリミジン系抗癌薬+オキサリプラチン) レジメンの催吐性については、 高度催吐性リスクに分類するのが妥当であると考えられる。
❸ 悪心・嘔吐は、 ゾルベツキシマブ投与開始1時間以内に発現することが多いため、 1次予防・早期対応が必要である。 特に初回はゾルベツキシマブの投与量が多いため注意が必要である。 2回目以降の悪心・嘔吐の発現頻度は低下するが、 初回だけでなく点滴速度を含めた適切な制吐療法を継続して行うことが重要である。
❹ 併用されるフッ化プリミジン系抗癌薬+オキサリプラチンは中等度催吐性リスクであることから、 一次予防を目的とした制吐療法として5-HT3受容体拮抗薬+NK1受容体拮抗薬+ステロイドの3剤併用は必須である。 治験では 「3剤併用療法+others」 において最も良好な傾向が認められたが、 「others」 として何を用いるかについては一定しておらず、 抗ヒスタミン薬やオランザピンなどが使われていた。
❺ ただし、 これまでの制吐療法の臨床試験では抗ヒスタミン薬の制吐作用は明らかではなく、 治験に参加した医師の考察ではあるが、 抗ヒスタミン薬による眠気が制吐効果をもたらした可能性もある。
❻ ゾルベツキシマブによる悪心・嘔吐は投与後早期から発現することが多いため、 通常行われている化学療法当日夕方もしくは眠前のオランザピン投与では、 ゾルベツキシマブによる急性期の悪心・嘔吐への対応策とならないことに注意が必要であり、 オランザピンの前日眠前や当日朝の投与の追加も考えられる。 また、 ドパミンD2受容体拮抗薬もレスキュー薬も適宜使用する。
❼ 悪心・嘔吐発現時の対処法として制吐薬はどの組み合わせでも約半数で悪心・嘔吐が見られたため、 制吐薬以外の対応方法も求められる。 ゾルベツキシマブの投与速度と催吐性の関連性があり、 点滴速度によって催吐性が異なる (中断や速度低下により軽減する) ことが経験されているため、 点滴速度の調整を適切に行う必要がある。
初回投与時には点滴速度を遅くして開始し、 悪心・嘔吐に注意しながら徐々に速度を上げて、 悪心・嘔吐発現時には中断、 速度を下げるなど柔軟に対応し、 個々の患者での適正な投与速度を見つけることが重要である。 このように速度調節を行うために長時間の点滴時間を要する可能性を考慮して、 特に初回投与時には入院での治療を提案してもよいと思われる。
❽ 遅発期の悪心・嘔吐については結果が公表されていないが、 治験に参加した医師によると遅発期にも悪心・嘔吐が見られたため、 高度催吐性リスクに対する制吐療法として推奨されている遅発期での制吐目的のためのオランザピン併用が望ましい。
❾ 治験において、 ゾルベツキシマブ/プラセボの減量は認められていなかったため、 悪心・嘔吐対策としてのゾルベツキシマブの減量は慎重に検討すべきである。
❿ ゾルベツキシマブを含む化学療法の治療選択に際して、 患者に十分な情報を提供し、 担当医に加え、 看護師、 薬剤師などが多角的に継続的に関わり、 自宅での悪心・嘔吐への対応などについて理解をえられるよう、 安心して治療を受けられるようにすることが求められる。
⓫ ゾルベツキシマブを含む化学療法についての情報は治験など限定されているので、 日常診療に導入される際には、 効果や有害事象に関する患者のアウトカムについての情報を収集し、 適切に対応することが求められる。
制吐薬適正使用ガイドライン2023改訂ポイント
① -総論編-
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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