HER2陽性の切除不能胃・食道胃接合部癌患者において、 トラスツズマブとSOX療法 (S-1+オキサリプラチン) の併用効果を検証した単群コホートの第Ⅱ相試験HIGHSOXの結果より、 併用療法の良好な忍容性と有効性が示された。
原著論文
▼解析結果
Multicenter phase II study of trastuzumab with S-1 plus oxaliplatin for chemotherapy-naïve, HER2-positive advanced gastric cancer. Gastric Cancer. 2019 Nov;22(6):1238-1246. PMID: 31102009
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HIGHSOX試験の概要
対象
- 化学療法未治療でHER2陽性*の切除不能な胃・食道胃接合部癌
- 20-75歳、 左室駆出率 (LVEF) ≧50%
*免疫組織化学染色 (IHC) でIHC3+もしくはIHC 2+かつFISH陽性
方法
- 75例に以下のレジメンを21日毎に繰り返し (病勢進行または許容できない毒性、 患者の拒否、 または医師の中止の決定があるまで継続)
- トラスツズマブ (1サイクル目は8mg/kg、 2サイクル目以降は6mg/kg) とオキサリプラチン130mg/m²をday1に投与+S-1 (用量は体表面積に応じて*) をday1-14に1日2回投与
*体表面積 (BSA) が<1.25m²は40mg、 1.25-1.5m²は50mg、 >1.5m²は60mg
- オキサリプラチン点滴の前には、 予防的制吐剤の投与が推奨された。
評価項目
主要評価項目:奏効率 (ORR)
副次評価項目:全生存期間 (OS) 、 無増悪生存期間 (PFS) 、 安全性
HIGHSOX試験の結果
患者背景
治療状況
- 治療サイクル数の中央値は8サイクル
- 治療中止の主な理由は病勢進行 (39例) 、 21日以上の投与遅延 (9例) 、 好中球減少症 (4例) 、 血小板減少症 (1例) 、 AST/ALT上昇 (1例) 、 クレアチニン上昇 (1例) 、 肺炎 (1例)
追跡期間中央値
15.6ヵ月
ORR
70.7%
(95%CI 59.0-80.6%)
病勢コントロール率
93.3%
(95%CI 85.1-97.8%)
OS中央値
18.1ヵ月
(95%CI 15.6-26.5ヵ月)
OS率 (1年時、 2年時)
77.2%、 43.0%
PFS中央値
8.8ヵ月
(95%CI 7.4-12.2ヵ月)
PFS率 (6ヵ月時、 1年時)
68.5%、 39.5%
HER2発現量によるサブグループ解析
IHC3+ (55例)
IHC2+/ISH陽性 (20例)
IHC3+ vs IHC2+/ISH陽性
HR 0.734 (95%CI 0.366-1.475)
オキサリプラチンの相対用量強度 (RDI) によるサブグループ解析
RDI>75%
- ORR:91.7%
- OS:17.7ヵ月
- PFS:9.8ヵ月
RDI 50-75%
- ORR:72.7%
- OS:18.1ヵ月
- PFS:8.8ヵ月
RDI<50%
- ORR:51.7%
- OS:20.5ヵ月
- PFS:8.7ヵ月
有害事象 (AE)
- Grade3~4の治療関連AEの発現は45.3%であった。
- Grade3以上の好中球減少症、 貧血および血小板減少症を認めた患者は、 それぞれ10.7%、 6.7%、 1.3%であり、 発熱性好中球減少は認められなかった。
- Grade3以上のインフュージョン・リアクションと心不全、 治療関連の死亡例は認めなかった。
- AEによるS-1、 オキサリプラチン、 トラスツズマブを減量、 中断、 中止した割合はそれぞれ下記の通り
- S-1:54.6%、 50.6%、 18.6%
- オキサリプラチン:50.6%、 46.6%、 29.3%
- トラスツズマブ:10.6%、 40.0%、 0%
著者らの結論
HER2陽性の切除不能な胃・食道胃接合部癌患者において、 トラスツズマブとSOXの併用療法は有効であり、 忍容性も良好であることが示唆された。