HOKUTO編集部
30日前
広島大学病院 脳神経内科の音成 秀一郎先生による連載 「けいれん診療ガイド」 です。 第9回は "けいれん発作と間違えやすい急性期の異常運動" について解説いただきます。
脳梗塞などの脳血管障害により生じる運動障害としては 「麻痺 (脱力) 」 がコモンですが、 脳卒中では時に不随意運動が出現することがあります。 よって急性に出現する不随意運動に遭遇したら、 まずは脳卒中を念頭に画像検査を実施します。
具体的にはヒョレアやバリスムが脳血管障害で比較的認めやすい不随意運動です (表1)。 特にヒョレアについては、 例えば若年者であれば、 高リン脂質抗体症候群など膠原病に関連した脳梗塞が鑑別の上位にあがってきます。
一方で、 不随意運動の中でミオクローヌスは遭遇頻度が高い症候ですが、 このミオクローヌスについては脳卒中の急性期で認めることはまれです。 急性期診療でのミオクローヌスといえば、 肝性脳症などの代謝性脳症に伴う陰性ミオクローヌスや、 蘇生後脳症で認めるLance-Adams症候群で認めることが多いでしょう。 なお、 Lance-Adams症候群のミオクローヌスは刺激誘発性である点が特徴です。
つまり、 病因別に生じやすい運動異常のパターンをざっくりと覚えておくと、 臨床での鑑別に役立ちます。 なお、 けいれん発作については、 脳卒中含めてあらゆる病態で生じ得ますので、 病因鑑別としては不向きです。
不随意運動は種類が多くて覚えるのが難しいと思いますが、 まずは遭遇機会の多いミオクローヌス (myoclonus) と振戦 (tremor) だけでも押さえておきましょう。
ミオクローヌスとは、 自分の意思と無関係に瞬発的な筋収縮が生じる症候をさします。 けいれん発作や振戦と何が違うのかというと『持続性』です。 けいれん発作や振戦は持続的に生じる症候であるのに対し、 ミオクローヌスは非常に素早く短時間でイレギュラーなのが特徴です。
そのため、 よく 「電気的な筋収縮」 と表現されます。 ただし、 ミオクローヌスは連発することがありますので 「持続的」 に見えてしまうのですが、 よくよく観察すると一つ一つは動きは短時間で、 そのインターバルもイレギュラーです。 よって不随意運動はリズムを捉えることが大事です。 ミオクローヌスに気がついたら、 その病因が大事です。 ですから一般臨床医が遭遇しやすいミオクローヌスのコモンな病態を押さえておきましょう。
対する振戦については、 前述のように持続的で律動的な動きを指します。 つまりリズムが一定である点がミオクローヌスとの大きな違いです。 典型的にはパーキンソン病で認める静止時振戦です (以前は安静時振戦と表現していましたが、 現在日本神経学会の用語集では静止時振戦が採用されています)。 パーキンソン病は高齢者の100人に1人はいるコモンな神経変性疾患として重要ですので、 番外編として次回あらためて紹介したいと思います。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。