前治療歴のない、 切除不能な転移・再発または局所進行性のトリプルネガティブ乳癌(TNBC)患者において、 ペムブロリズマブと化学療法の併用療法の効果を、 プラセボと化学療法の併用療法を対照に検証した第Ⅲ相二重盲検ランダム化比較試験KEYNOTE-355の結果より、 PD-L1のcombined positive score (CPS) が10以上のサブグループにおける全生存期間 (OS) および無増悪生存期間 (PFS) に対する有効性が示された。
原著論文
▼中間解析結果
Pembrolizumab plus chemotherapy versus placebo plus chemotherapy for previously untreated locally recurrent inoperable or metastatic triple-negative breast cancer (KEYNOTE-355): a randomised, placebo-controlled, double-blind, phase 3 clinical trial. Lancet. 2020 Dec 5;396(10265):1817-1828. PMID: 33278935
▼追跡結果
Pembrolizumab plus Chemotherapy in Advanced Triple-Negative Breast Cancer. N Engl J Med. 2022 Jul 21;387(3):217-226. PMID: 35857659
関連レジメン
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KEYNOTE-355試験の概要
対象
前治療歴のない、 切除不能な転移・再発または局所進行性のTNBC患者
方法
パート1:非盲検非無作為化Safety run-in試験
ペムブロリズマブ200mgを3週毎に投与し、 さらにその35例を以下の3群に1:1:1で割り付け
- ゲムシタビン1,000mg/m²+カルボプラチンAUC 2に相当する量をday1,8に投与 (21日サイクル)
- パクリタキセル90mg/m²をday1,8,15に投与 (28日サイクル)
- nab-パクリタキセル100mg/m²をday1,8,15に投与 (28日サイクル)
パート2:二重盲検無作為化試験
847例を以下の2群に2:1で割り付け
ペムブロリズマブ200mgを3週毎に投与 (最大35回まで) +上記①-③のうち担当医が選択
プラセボを3週毎に投与 (最大35回まで) +上記①-③のうち担当医が選択
評価項目
パート1
パート2
- 主要評価項目:PD-L1発現陽性 (CPS≧10およびCPS≧1) 患者と全患者におけるPFSとOS
- 副次評価項目:奏効率 (ORR) 、 奏効期間、 病勢コントロール率
KEYNOTE-355試験の結果
患者背景
- パート2の2群間で同様であった。
- PD-L1 CPS<1の患者は25%、 PD-L1 CPS≧1の患者 (CPS-1) は75%、、 PD-L1 CPS≧10の患者 (CPS-10) は38%であった。
OS中央値
全患者
(95%CI 15.3-19.0ヵ月)
(95%CI 13.9-17.2ヵ月)
HR 0.89 (95%CI 0.76-1.05)
CPS-1サブグループ
(95%CI 15.5-19.5ヵ月)
(95%CI 12.8-17.4ヵ月)
HR 0.86 (95%CI 0.72-1.04)、 p=0.1125
CPS-10サブグループ
(95%CI 19.0-26.3ヵ月)
(95%CI 12.6-18.8ヵ月)
HR 0.73 (95%CI 0.55-0.95)、 p=0.0185
OS率 (18ヵ月時)
全患者
(95%CI 43.6-51.9%)
(95%CI 36.0-47.5%)
CPS-1サブグループ
(95%CI 43.5-53.0%)
(95%CI 34.7-48.0%)
CPS-10サブグループ
(95%CI 51.4-64.5%)
(95%CI 34.9-53.9%)
PFS中央値
全患者
- ペムブロリズマブ群:7.5ヵ月
- プラセボ群:5.6ヵ月
HR 0.82 (95%CI 0.70-0.98)
CPS-1サブグループ
- ペムブロリズマブ群:7.6ヵ月
- プラセボ群:5.6ヵ月
HR 0.75 (95%CI 0.62-0.91)
CPS-10サブグループ
- ペムブロリズマブ群:9.7ヵ月
- プラセボ群:5.6ヵ月
HR 0.66 (95%CI 0.50-0.88)
PFS率 (6ヵ月時、 12ヵ月時)
全患者
- ペムブロリズマブ群:55.4%、 29.8%
- プラセボ群:47.8%、 20.9%
CPS-1サブグループ
- ペムブロリズマブ群:56.4%、 31.7%
- プラセボ群:46.6%、 19.4%
CPS-10サブグループ
- ペムブロリズマブ群:65.0%、 39.1%
- プラセボ群:46.9%、 23.0%
ORR
全患者
- ペムブロリズマブ群:40.8%
- プラセボ群:37.0%
CPS-1サブグループ
- ペムブロリズマブ群:44.9%
- プラセボ群:38.9%
CPS-10サブグループ
- ペムブロリズマブ群:52.7%
- プラセボ群:40.8%
奏効期間 (中央値)
全患者
- ペムブロリズマブ群:10.1ヵ月
- プラセボ群:6.5ヵ月
CPS-1サブグループ
- ペムブロリズマブ群:10.1ヵ月
- プラセボ群:6.8ヵ月
CPS-10サブグループ
- ペムブロリズマブ群:12.8ヵ月
- プラセボ群:7.3ヵ月
有害事象 (AE)
治療関連AE (グレード3-5) と免疫関連AEの発現率
- ペムブロリズマブ群:77.9%、 5.3%
- プラセボ群:73.7%、 0%
著者らの結論
CPSが10以上のPD-L1陽性で転移性のTNBC患者において、 ペムブロリズマブ+化学療法併用療法は、 化学療法単独と比較して、 PFSとOSを有意に延長させることが示された。