IBDマニュアル
11ヶ月前
本コンテンツでは原因不明で治療が困難な炎症性腸疾患 (IBD) について、 疫学・病態・治療などの観点から解説を行います。 最新のエビデンスを基にしておりますので、 是非臨床の参考としていただければ幸いです。
旭川医科大学 総合診療部/消化器疾患病態学講座
炎症性疾患 (IBD) である潰瘍性大腸炎 (UC) とクローン病 (CD) は、 「難病の患者に対する医療等に関する法律」が規定する指定難病であり、 医療費助成の対象となっている。 小児IBD (18歳未満) についても、 「小児慢性特定疾病医療費助成制度」において助成の対象となる。
成人の場合は、 重症度が一定以上であることを要件としており、 具体的にはUCでは臨床的重症度分類で中等症以上、 CDではIOIBDスコアが2点以上とされる。
しかしながら、 軽症UC、 あるいはIOIBDスコア2点未満のCDの場合であっても、 高額な医療の長期継続 (医療費総額が33,330円を超える月が支給認定申請月以前の12月以内に3回以上ある場合) が必要な患者さんは特例となり、 医療費助成の対象となる。 小児については重症度の基準はない。
難病指定医が、 IBDの診断基準、 重症度を満たす患者に診断書 (臨床調査個人表) を作成する。 IBD患者自身が表1に示す書類を準備し、 都道府県窓口に直接提出する。
認定までには数ヵ月要するため、 受給者証が交付された後に医療費の払い戻し手続きをすることになる。 助成対象は、 病院での診察費以外に薬局での保険調剤、 訪問看護の費用などが含まれる。 診断日以降に発生した医療費に対して払い戻し請求を行うことが可能だが、 入院など緊急の治療が必要だった場合には、 申請日から最長3ヵ月まで遡ることができる。
患者の負担額は基本的に2割に減額されるが、 所得に応じて成人は表2、 小児では表3のように上限額が設定される。 成人では高額かつ長期 (月ごとの医療費総額が5万円を超える月が年間6回以上)、 小児では重症例が特例となり、 負担額が減額される。
「身体障害者福祉法」に規定される身体障害があることを認定されると身体障害者手帳が発行される。 IBDに関連するものとしては、 永久人工肛門を造設した場合と、 短腸症候群となり食こと摂取が困難で長期間 (最低6ヵ月) の中心静脈栄養および栄養療法が必要となる小腸機能障害が該当する。 病状に応じて1級、 3級、 4級のいずれかに認定される。
障害認定の指定を受けた医師が、 身体障害者診断書・意見書を作成する。 IBD患者自身が表1に示す書類を準備し、 都道府県窓口に直接提出する。 身体障害者手帳が発行されると税の控除や公共交通機関の割引などの各種サービスを受けることが可能となる。
病気のために何らかの障害を持った場合、 障害の程度に応じて、 国民年金から障害基礎年金が受給できる。
病気の療養のために働くことができず、 収入が減った場合に、 給与の一定割合が支給される。
IBD患者は金銭面に不安を抱えている場合が多く、 安心して治療受けるための窓口が必要となる。 医療ソーシャルワーカーは、 福祉制度の活用に関する援助、 社会復帰への援助を行う役割を担っている。 社会保障の申請には、 各施設の医療ソーシャルワーカーと連携し進めていくのが望ましい。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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