寄稿ライター
1ヶ月前

こんにちは、 Dr.Genjohです。 新シリーズ 「検証 +3.09%の真実」 第4回は、 医師を含む医療従事者全体の働き方や、 雇用に関する国の考えについて切り込みます。
>>第3回はコチラ

本稿で扱う内容としては珍しく、 今回は 「一見明るい話題」 が含まれています。
【図1】*¹⁾をみてください。 処置・手術に係る 「休日加算1」 「時間外加算1」 「深夜加算1」 などの算定要件が見直され、 夜勤帯のオンコール担当者に対して、 勤務間インターバルや代償休息の確保が求められるようになりました。 さらに、 宿日直後の休息時間への配慮も明記されています。
やったね!これまで医師の善意により無償で行っていたオンコールが、 ちゃんと勤務として認められるようになりました。そのうえ、宿日直勤務後の休息時間への配慮が明記されました!

…もっとも、 多くの先生方が感じている通り、 この改定が直ちに現場で機能するとは考えにくいでしょう。 筆者は循環器内科です。 仮に上記の体制が適応されたとして、 オンコール明けや当直明けで休みに入った医師の代わりに、 緊急カテーテル治療を担える人員が足りません。 現状のローテーションを維持する限り、 当面は実質的な運用が難しい病院も多いはずです。
では、 なぜ厚生労働省は現実味の無い改定を打ち出したのか。 おそらく背景にあるのは、 急性期医療の 「集約化」 です。
前回の記事でも触れた通り、 「急性期病棟は20万人当たり1施設で十分である」 と厚生労働省は述べています。 「少人数の医師が各地で無理にオンコール体制を維持するのではなく、 医師を集約することで、 休息を確保できる体制へ移行したい」。 今回の改定は、 その流れの一環と考えられます。

そう考えた場合、 上記改定は本当に福音なのでしょうか?緊急処置に携わるオンコール医として働き続けるには、 今後は集約された急性期病院の中で、 必要とされる役割を担い続けることが求められるでしょう。
一方で、 急性期病院に在籍しているのに、 オンコール業務に関与していない医師は、 より条件の厳しい環境への移動を余儀なくされるかもしれません。

同様の流れは、 看護師にも及んでいます。 シリーズ第2回でも解説した通り、 2026年改定では多職種協働加算が導入されています。 看護職員配置数に、 看護師以外のコメディカルをカウントすることが可能になりました。
それだけでなく、 ICTやAIを活用して看護業務を効率化している場合、 看護配置基準を厳密に満たさなくても、 一定の入院料を算定できるようになりました。 【図2】
ただし、 「急激な変化を抑制するために減少幅は1割未満にすること」と制限があります。 これは 「業務効率化により、 看護師の雇用数を10%カットしてね」 というメッセージとも取れます。

医師事務作業補助者 (以下、 クラーク) についても同様です。 現在、 一定数のクラークを配置している場合には、 医師事務作業補助体制加算が算定できます。
しかし、 今回の改定では、 AIや音声入力システムを活用している場合、 クラーク1人を1.2~1.3人分として評価できるようになりました。 さらに、 紹介状の作成補助や検査オーダー入力など、 代行可能業務も拡大されています。 【図3】

これも看護師同様、 「業務効率化により、 クラークの雇用数を16~23%カットしてね」 というメッセージとも取れます。
また、 今回の改定では、クラークが代行入力できる幅が、紹介状の作成補助や、検査オーダーなどに広がりました。 クラークが代行する医師専従業務の幅が広がれば、 医師の業務量が削減され、 最終的には医師そのものの需要を削減することにも繋がるでしょう。

なぜ、 国はこれほどまでに医療従事者に対する抑圧を強めるのか?その答えは、 財務省が指摘する 「医療・介護産業の歪み」 にあります。 製造業の従事者数は減少する一方で、 国内GDP成長に大きく貢献してきました。 一方で医療・介護分野は従事者数が増加しているにもかかわらず、 生産性向上への寄与が限定的とされています。 【図4】 *²⁾
もちろん、 GDPだけで医療の価値を測れるわけではありません。 しかし国としては、 一人当たりの生産性を高める方向へ政策を進めており、 その考え方が、 今回の診療報酬改定にも反映されているのです。 今後の医療従事者は、 生き残るために精進し続けることが、 これまで以上に問われていくのかもしれません。
¹⁾厚生労働省 : 令和8年度診療報酬改定説明資料等について 「0_令和8年度診療報酬改定の概要【医科全体版】」
²⁾財務省 : 財政制度分科会 (令和7年11月5日開催) 資料一覧 社会保障①

Xアカウント : @DrGenjoh

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。