海外ジャーナルクラブ
1ヶ月前

亀田総合病院呼吸器内科の森本康弘氏 (現・東京病院呼吸器内科) らの研究グループは、 肺MAC症患者を対象に、 低用量エタンブトール療法と視神経症との関連を傾向スコア分析を用いた後ろ向きコホート研究で評価した。 その結果、 低用量エタンブトール療法は有効性を損なうことなく視神経症の発症リスクを低減する可能性が示された。 本研究はOpen Forum Infect Dis誌において発表された。
Association between Low-dose Ethambutol Therapy and Optic Neuropathy in Mycobacterium avium Complex Pulmonary Disease: A Retrospective Cohort Study Using Propensity Score Analysis. Open Forum Infect Dis. 2026 Mar 3:ofag127.
これまで本邦から、 肺MAC症治療において低用量エタンブトールが視神経症の発症リスクを低減することを報告した論文が2報ありました。一方、 視神経症の発症リスクに関連する背景因子を十分に調整した論文はありませんでした。
亀田総合病院呼吸器内科では、 肺MAC症治療において、 早くから低用量エタンブトールを実臨床で導入してきました。 そこで本研究では、 単施設研究ではあるものの、 223例 (低用量 79例 vs 高用量 144例) を集積し、 プロペンシティスコアを用いて視神経発症リスクに関わる背景因子を十分に調整した解析結果を報告しました。
さらに、 低用量群では視神経症の発症が認められなかったことから、 臨床疫学者の支援のもと、 ブートストラップ法を用いるなど解析面でも発展的な工夫をしています。
本研究が、 肺MAC症に対する有効かつ安全な治療戦略の発展に少しでも貢献できれば幸いです。
現在のガイドラインでは、 肺MAC症の治療においてエタンブトールを第一選択薬として推奨しているが、 視神経症を誘発する可能性がある。 これまでの研究で、 低用量エタンブトールは有効性を損なうことなく視神経症の発症率を低減させる可能性が示唆されているが、 視神経症のリスク因子を十分に調整していなかった。
そこで本研究では、 肺MAC症患者における低用量エタンブトール療法と視神経症との関連を調査した。
後ろ向きコホート研究において、 2003年4月~2024年7月に亀田総合病院で肺MAC症の治療を受けた患者223例が、 エタンブトールの投与量により以下の2群に分類された。
主要評価項目は視神経症の発症率、 副次評価項目は培養陰性化の不成功、 マクロライド耐性などであった。 傾向スコアに基づくオーバーラップ重み付けを用いて患者背景を調整し、 ブートストラップ・リサンプリングにより生成されたデータセットを用いて結果を比較評価した。
対象患者223例のうち79例が低用量 (10.7mg/kg/日)、 144例が高用量 (15.4mg/kg/日) のエタンブトールを投与された。
低用量群では視神経症の発症が認められなかった一方で、 高用量群では4.8%が発症した。
調整後、 視神経症の発症リスクは低用量群で有意に低かった (リスク差 -17.1%㌽ [95%CI -32.9~-5.4%㌽])、
一方で、 培養陰性化の不成功およびマクロライド耐性のリスク差については、 両群間で有意差が認められなかった (それぞれ-20.0%㌽ [95%CI -45.6~2.5%㌽]、 -4.9%㌽ [95%CI -13.5~0.0%㌽])。
著者らは 「低用量エタンブトール療法は、 有効性を損なうことなく視神経症の発症リスクを低減する可能性があり、 肺MAC症に対するより安全な選択肢となり得る」 と報告している。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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