HOKUTO編集部
2ヶ月前
RET融合遺伝子陽性の進行非小細胞肺癌(NSCLC)患者を対象に、 RET阻害薬セルペルカチニブの有効性および安全性を、 化学療法+抗PD-1抗体ペムブロリズマブを対照に検証した第Ⅲ相無作為化比較試験LIBRETTO-431の追加解析の結果から、 セルペルカチニブは新規/既存の脳転移に対しても有効であることが示された。 国立がん研究センター東病院呼吸器内科長/副院長の後藤功一氏が発表した。
LIBRETTO-431試験¹⁾の中間解析の結果、 セルペルカチニブ群は対照群に比べて有意に無増悪生存期間 (PFS) を延長させたことが既に報告されており、 現行の 「肺癌診療ガイドライン 2023年版」 ではRET融合遺伝子陽性NSCLCへの治療選択肢としてセルペルカチニブが推奨されている²⁾。
また、 LIBRETTO-001試験³⁾では、 セルペルカチニブが中枢神経系 (CNS) を保護し、 既存の脳転移の改善および新規脳転移の出現を予防または遅延させる可能性が示唆された。
今回の研究では、 セルペルカチニブの中枢神経系保護作用に焦点を当てた新規・既存の脳転移への効果について検証が行われた。
評価項目はベースラインでの脳転移有無別の成績 (頭蓋内病勢進行までの時間、 頭蓋内奏効率 [ORR]、 頭蓋内奏効期間[頭蓋内DOR] など) だった。
脳転移に対する有効性解析では、 LIBRETTO-431試験の対象患者のうち、 CNS評価が可能でベースラインおよび投薬中に1回以上中枢神経系のスキャンを受けた患者 (CNS-pembro) 192例が対象となった。
両群間のベースライン特性は概ね同様だったが、 セルペルカチニブ群では対照群に比べ、 盲検下独立中央判定 (BICR) に基づくベースラインの脳転移、 およびCNS放射線治療歴のある患者の割合がわずかに少なかった。
ベースライン脳転移の有無にかかわらず、 セルペルカチニブ群では対照群に比べて新規脳転移の発現を遅延し、 既存脳転移への効果が示された。
▼ベースライン脳転移なし集団
12ヵ月時点のCNSの病勢進行(PD)累積発生率
HR 0.17 (95%CI 0.04-0.69)
12ヵ月時点のCNS以外のPD累積発生率
HR 0.48 (95%CI 0.27-0.84)
12ヵ月時点の死亡累積発生率
HR 0.73 (95%CI 0.12-4.39)
CNSの12ヵ月PFS率
HR 0.46 (95%CI 0.18-1.18)
▼ベースライン脳転移あり集団
12ヵ月時点のCNSのPD累積発生率
HR 0.61 (95%CI 0.19-1.92)
12ヵ月時点のCNS以外のPD累積発生率
HR 0.45 (95%CI 0.15-1.36)
12ヵ月時点の死亡累積発生率
HR 7.5x10⁷ (0.00-NE)
CNSの12ヵ月PFS率
HR 0.74 (95%CI 0.28-1.97)
ベースラインで測定可能または測定不能の脳転移あり集団における頭蓋内ORR、 CR率、 DORは以下の通り。
頭蓋内ORR
頭蓋内CR率
頭蓋内CRが得られた患者で脳転移の増悪が認められなかったのは、 セルペルカチニブ群が9例中7例、 対照群が7例中3例だった。
頭蓋内奏効期間中央値
頭蓋内DOR中央値
頭蓋内DOR率
後藤氏は 「RET陽性の進行NSCLC患者において、 セルペルカチニブは、 ベースライン時の脳転移の有無に関わらず、 頭蓋内病勢進行を遅らせ、 化学療法+ペムブロリズマブと比較して高い頭蓋内ORRを達成した。 本結果は、 セルペルカチニブがRET陽性の進行NSCLC患者において、 望ましい1次治療であることを支持するものである」 と報告した。
¹⁾ N Engl J Med. 2023 Nov 16; 389(20): 1839-1850.
²⁾ 日本肺癌学会編 : 肺癌診療ガイドライン2023年版. 2023.
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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