亀田総合病院
1年前
高CO₂血症とは、 主に肺胞での換気が低下して、 動脈血中の二酸化炭素分圧(PaCO₂)が基準値より上昇している状態。 今回は高CO₂血症に焦点をあて、 その病態やマネージメントについて解説します。
呼吸を評価する場合は、 以下に示すように、 酸素化と換気に分けて考えることが重要です。
①酸素化障害の対応
「酸素化」とは酸素が血液に取り込まれることです。 酸素化障害に対しては、 PaO₂≧60mmHgを目標として吸入酸素濃度を上げることで対応します。
②換気不全の対応
換気とは血液がCO₂を肺胞に放出し、 それが呼吸によって体の外に出されることです。 換気不全がある場合、 高CO₂血症を呈します。 換気不全の改善のためには、 換気補助が必要であり、 非侵襲的陽圧換気療法 (NPPV*) や挿管人工呼吸管理が考慮されます。
そして、 急性期の呼吸管理では、 CO₂の値を目標にするのではなく、 呼吸性アシドーシスによるアシデミアの程度を指標とし、 pH 7.2~7.25以上を保つことを目標とします。
一般的に、 高CO₂血症を呈する基礎疾患としては、 慢性閉塞性肺疾患 (chronic obstructive lung disease:COPD)、 肺結核後遺症、 進行した気管支拡張症などが多いです。 これらの疾患に呼吸器感染症を合併した際に呼吸筋疲労をきたしたり、 COPD増悪により閉塞性換気障害が一過性に増悪したりすることで、 急性の高CO₂血症を呈します。
これらの疾患では、 慢性的に高CO₂血症を認めていることも少なくありません。 よって、 急性の高CO₂血症ではなく、 原疾患の自然経過として、 高CO₂血症の緩徐な増悪を認めて受診する場合もあります。
よって、 患者の普段のPaCO₂を推測することにより、 急性期を過ぎた後の治療の目安とするPaCO₂の値を考えたり、 在宅NPPVを導入するかの判断の参考になります。
予測式は以下の通りです¹⁾。
受診時PaCO₂ − (7.4−受診時pH) /0.008
例えば、 COPDを基礎とする患者が呼吸器感染症で受診し、 血液ガス分析でpH 7.19、 PaO₂ 55mmHg、 PaCO₂ 80mmHg、 HCO3-29.5 mEq/Lを認めたとします。 pH 7.19 < 7.2というのは、 生命の危険を意味する値であり、 ただちに補助換気が必要です。
本症例で普段のPaCO₂を計算してみますと、 「80-(7.4-7.19)/0.008」=54mmHgとなりますので、 この患者は急性経過の高CO₂血症を呈しており、 この患者が急性期を過ぎた後は、 最終的にPaCO₂ 54mmHgまで改善させるのが治療の目安となります。
もし、 肺結核後遺症の患者が呼吸器感染症で入院し、 血液ガス分析でpH 7.38、 PaO₂ 55mmHg、 PaCO₂ 65mmHg、 HCO₃⁻ 37.0mEq/Lである場合は、 どうすれば良いのでしょうか?ただちに補助換気は必要でしょうか?
この場合は、 pH7.38で正常範囲に保たれており、 患者の高CO₂血症 (換気不全) は急に発症したものではなく、 慢性的に生じており、 腎性代償が働いているものと考えられます。 よって、 慌てて補助換気を行う必要はありません。
そして、 普段のPaCO₂は「65−(7.4 −7.38)/0.008」≒62mmHg程度と考えられます。 ただし、 呼吸筋疲労が進行してさらなるCO₂の上昇を認めpHが低下する場合は補助換気が必要になりますし、 普段から高CO₂血症が存在しており、 夜間のみの在宅NPPVの導入については検討が必要です。
このように、 高CO₂血症を呈する患者においては、 血液ガス所見から普段のPaCO₂を予測することで、 的確なマネージメントをすることができます。
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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