HOKUTO編集部
3ヶ月前
日本食道学会による『食道癌取扱い規約第12版』 (以下、 第12版) が2022年9月に発刊された。第78回日本食道学会学術集会では、順天堂大学上部消化管外科 (食道・胃外科) 教授の峯真司氏が、 第12版での主な改訂箇所とその問題点、 および今後の検討課題について解説した。
第12版の改訂では、 術前療法の重要性が高まっている現状を考慮し、 術前診断に関する記載、 特に治療方針に大きな影響があると考えられるT4診断およびリンパ節転移診断について大幅な追加・修正が行われるとともに、 治療効果判定規準についても改訂が加えられた。
今回峯氏は、 特に重要な検討課題となる下記の改訂箇所について解説した。
cT3T4の亜分類を変更
リンパ節転移を部位から個数へ
胸部食道癌のリンパ節郭清の対象を統一
食道胃接合部癌の定義策定
壁深達度 (T) 分類において、 旧版 (第11版) でcT3とされていたものが、 第12版では隣接臓器浸潤が否定できる切除可能病変cT3r (resectable) と隣接臓器への浸潤が否定できない切除可能境界病変cT3br (borderline resectable) に亜分類された。
峯氏は 「第12版におけるcT3T4亜分類の再現性や臨床的な妥当性についての検証が必要であり、 特に、 cT3r、 cT3br、 cT4は、 本当にこの分類が適切であるか、 専門家以外でも同等の診断が可能かと言った面での確認が求められる」 と解説した。
リンパ節の転移個数は強い予後因子として既に知られている。 第11版までリンパ節転移の程度は転移リンパ節の"部位"により分類されていたが、 特に組織学的進行度分類 (Pathological Stage) においては従来の分類に比べ、 "個数"がより明確に予後を反映すると考えられたため、 第12版では国際対癌連合 (UICC) のTNM分類に準じた"個数"による分類へ変更されている。
一方で臨床的進行度分類 (Clinical Stage) に関しては全国登録のデータがないため、 ワーキンググループのデータを用いて分類基準が策定された。 「分類については今後の状況や臨床への影響に応じてさらに検討を進めていきたい」 (峯氏) という。
胸部食道の鎖骨上リンパ節 (104) は一定の郭清効果が得られるため、 M1b*と区別する目的でM1a**と表記することとされた。 なお、 M1aはClinical StageのN2-3およびPathological StageのN3に該当し、 104+であってもStage IVとは判定されないという。
この変更について、 峯氏は 「D2からの除外により104の予防的郭清を省略する症例が増える可能性がある。 予防的郭清の省略における非劣性及び安全性に関しては、 臨床病期I-IVA (T4を除く) の胸部上中部食道扁平上皮癌に対する予防的鎖骨上リンパ節郭清省略に関する無作為化比較試験JCOG2013の結果待ちとなっているものの、 104リンパ節のD2からの除外が予防的郭清に与える影響について、 今後検討が必要である」 と述べた。
第12版では胸部食道癌の郭清対象が、 上部 (Ut)、 中部 (Mt)、 下部 (Lt) のすべてで統一された。 また本邦において、 領域リンパ節は予防的に郭清すべきとされているが、 106tbL、 111、 8a、 11pは郭清を省略しても良いこととされた。 この変更により、 実臨床において胸部食道癌手術の郭清範囲に変化が生じたかどうかを追跡していく必要があるという。
第12版における食道胃接合部癌の定義および記載項目は日本胃癌学会と合同で策定され、 胃癌の取り扱い規約に準ずる定義に変更されている。 しかし、 食道腺癌にも胃癌取り扱い規約のStageを使用することの妥当性については、 引き続き検討が必要だという。
その他、 峯氏は今後着実に検討していきたい課題として、 縦隔リンパ節の再定義、 リンパ節転移診断能の見直し、 食道胃接合部癌のT3定義などを挙げた。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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