HOKUTO編集部
2日前
米国臨床腫瘍学会 (ASCO 2025) の肺癌領域における注目点と日常臨床に影響を及ぼす試験報告について、 和歌山県立医科大学附属病院 呼吸器内科・腫瘍内科准教授の赤松弘朗先生にご解説いただきました。
ASCOに参加して10年以上になりますが、 今回ほど目玉に乏しかった学術集会はなかったと思います。 肺癌領域においてPlenary Sessionでの発表はゼロ、 Oral Abstract Session (口頭発表演題) も小規模なものが多く、 「さすがASCO」 という発表が少なかったことは残念でした。 しかし、 その中でもいくつかの注目すべき動向が見られましたので、 目に留まったことを述べたいと思います。
ASCO 2024の印象記でも述べましたが、 中国発の試験発表がOral Abstract Sessionでも非常に目につきました。 日本勢のOralでの発表はゼロで、 かつ台湾・韓国からの発表も非常に少なかった点とは対照的で、 印象に残りました。
一方で、 中国からの発表には第III相試験であるにも関わらず単施設で行われていたものや、 中国独自の開発品目に関するものもあり、 発表を聞いても今後我々の日常臨床にどのような影響を与えるのか予想しにくく、 会場も戸惑い気味でした。
Poster Sessionでは、 AIを活用した治療効果予測・予後予測の発表が目立ちました。 また全癌種横断のカテゴリとして 「AI」 枠が設けられるなど、 同分野はますます隆盛を極めると思われます。
日常臨床に近い動向では、 AIを用いた免疫染色が米食品医薬品局 (FDA) の迅速承認対象であることが発表されており*⁾、 AIが実臨床に参入する未来はすぐそこまで来ています。
小細胞肺癌 (SCLC) では、 DELPHI304試験¹⁾において、 2次治療としてのタルラタマブが新規標準治療となる報告がなされました。
¹⁾【DeLLphi-304】SCLCの2次治療にタルラタマブでOS改善、 死亡リスク40%低減
また切除可能な非小細胞肺癌 (NSCLC) の術前療法では、 術前療法としての抗PD-1抗体ニボルマブ+化学療法を検証したCheckMate 816試験²⁾、 および周術期ニボルマブのCheckMate 77T試験³⁾に関する長期成績が報告されています。
残念なサプライズとしては、 EGFR変異陽性の第3世代EGFR-TKIオシメルチニブ耐性例における抗HER3抗体薬物複合体patritumab deruxtecanの第Ⅲ相試験HERTHENA-Lung02⁴⁾の結果から、 無増悪生存期間 (PFS) はmetしたものの全生存期間 (OS) の改善が認められず、承認申請が取り下げられています。
そのほか、 EGFR変異陽性でTKI耐性獲得後のMET高発現または増幅例に対するMET阻害薬savolitinib+オシメルチニブの第Ⅲ相試験SACHI⁵⁾や、 KRAS G12C陽性例に対するKRAS G12C阻害薬adagrasib+抗PD-1抗体ペムブロリズマブの第Ⅱ相試験KRYSTAL-7⁶⁾などで有望な結果が報告されています。
なお、 上記演題のいくつかは、2025年7月5~6日に開催される 「Best of ASCO 2025 in Japan」 でも解説予定です。
プログラムの詳細はこちら
*⁾ Roche社2025年4月29日プレスリリース
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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