HOKUTO編集部
2ヶ月前
広島大学病院 脳神経内科の音成 秀一郎先生による連載 「けいれん診療ガイド」 です。 今回は番外編として、 "パーキンソン病の診察チェックリスト" について解説いただきます。
パーキンソン病 (Parkinson's disease;PD) は高齢者の100人に1人はいるコモンな神経変性疾患です。 超高齢社会である本邦ではさらに増加していますので、 非専門医の先生も未診断のPDに遭遇することはあると思いますから、 ここで基本を整理しておきましょう。
まず症状としては振戦、 無動、 筋強剛、 姿勢反射障害を特徴とします。 よく 「振るえているのでPDですか?」 という紹介がありますが、 実はただ振るえているだけであれば基本的にPDではありません。 なぜならPDの本質は振戦ではなく 「動作緩慢」 にあるからです。 動作緩慢がPDの必要条件と言っても過言ではないのです。
パーキンソン病を疑った場合、 以下の主要な運動症状 (臨床診断の4主徴) を評価しましょう。
静止時にみられる4~6Hzの規則的な振戦です。 リズミカルで、 初期には片側性です。 診察のポイントとしては、 今日の日付を尋ねたり、 計算課題を与えているときに、 手元で振るえていないかチェックすると良いでしょう。
動作開始や遂行の遅さで、 評価としては指タッピングや手の開閉運動において速度が低下していないかチェックします。 必ず左右それぞれで行い、 左右差を確認します。
安静にしてもらい、 手足を他動的に動かしてその抵抗感をチェックします。 これも左右差が大事です。
プルテストで後方への倒れやすさを評価します。 後方突進現象などをチェックします。
その他にも、 歩行障害や姿勢異常をチェックします。 歩行については小刻み歩行 (short step) になっていないか、 歩隔が狭いか (narrow based)、 すくみ足があるかをチェックし、 前傾姿勢などの姿勢異常も併せて評価しましょう。 また歩行中は、 手足の動きに左右差がないか確認します。
パーキンソン病かな?と思って、 診察上もパーキンソニズム (Parkinsonism) がありそうだと思ったら、 必ず問診でパーキンソン病の非運動症状 (non-motor symptoms) をチェックしましょう。
非運動症状のなかで重要なのは、 頻度の観点では便秘と嗅覚低下です。 少なくともどちらかを認めていることが多いので、 全く非運動症状がなければ本当にパーキンソン病か?と問い直すタイミングでもあります。 レム睡眠行動異常症は神経変性疾患との関連性が強い病態なので、 ここも問診で詰めると良いでしょう。
パーキンソニズムを呈しているからといって、 パーキンソン病とは限りません。 パーキンソニズムを呈する疾患の中で、 パーキンソン病以外をパーキンソン症候群と一括して表現しますが、 そこには多種の鑑別がありますので、 押さえておきましょう。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。