海外ジャーナルクラブ
5ヶ月前
GBD 2021では、 世界の疾病・傷害による負荷について、 COVID-19パンデミックも含めて分析した。 本研究はLancetにおいて発表された。
全医師が目を通すべきレポートです。 上位25疾患の中には加齢に伴う難聴や頭痛なども含まれており、 予防や治療政策による改善が期待されます。
国民の健康状態を、 障害や早期死亡の原因別に報告することは、 疾病・傷害による負荷について理解・対応する上で極めて重要である。
疾病負荷の推定ができれば、 エビデンスに基づく介入が促進され、 公衆衛生の研究者や政策立案者などは疾病を抑制できる戦略を実施可能となる。 また、 保健目標の進捗状況の厳密なモニタリングも可能となる。
世界疾病負荷調査 (GBD) は30年間、 このようなニーズに応えてきた。 GBDの推計値は定期的に更新されるが、 GBD 2021では初めてCOVID-19パンデミックによる健康被害に関する推計を提示した。
GBD 2021での疾病・傷害の負荷に関する分析では、 10万983のデータソースを用いて371の疾病と傷害について、 健康寿命 (HALEs)、 障害共存年数 (YLDs)、 早死損失年数 (YLLs)、 障害調整生存年 (DALYs =YLDs+YLLs) の4つの指標について調査した。
本論文では、 2010~2021年の世界のデータと、 過去10年間およびCOVID-19パンデミックの最初の2年間の疾病負荷の傾向が報告された。
全原因によるDALYsは、 2010~2021年に増加していた (26億3千万年→ 28億8千万年)が、 増加のほとんどの原因は人口増と高齢化であり、 年齢で標準化すると、 DALYsは2010~19年に14.2%低下していた。
年齢標準化DALYsを、 2019年と比較すると、 2020年は4.1%、 2021年は7.2%増加していた。
2021年のDALYsの原因として、 COVID-19が最多、 次いで虚血性心疾患であった。
1位 : COVID-19 (2億1,200万)
2位 : 虚血性心疾患 (1億8,830万)
3位 : 新生児期の障害 (1億8,630万)
4位 : 脳卒中 (1億6,040万)
著者らは解釈にて、 「COVID-19パンデミックの影響を含む疾病負荷の理解は、 費用対効果が高くエビデンスに基づく介入によって地域および世界レベルのニーズに応える上で不可欠である。 今回の知見から、 非感染性疾患の予防と治療政策を優先し、 保険システムを強化することが依然として極めて重要であることが示唆された。」 と述べている。
また、 CMNN (伝染病、 妊産婦、 新生児、 栄養) 疾患についても触れ、 「CMNN疾患による負荷は、 世界的には改善傾向にあるものの依然として容認できないほど大きく、 軽減に向けた前進を停滞させてはならない。 エビデンスに基づく介入が子どもや母親の命を救い、 社会全体の健康と経済の状況の改善に寄与するだろう。 各国政府と多国間機関は、 パンデミック対策計画を優先しつつ、 他の疾病負荷軽減にも努めるべきである」 と論じている。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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