【呼吸器・肺癌】押さえておきたい薬剤5選と使い分けのポイント
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関西医科大学呼吸器腫瘍内科学講座

2ヶ月前

【呼吸器・肺癌】押さえておきたい薬剤5選と使い分けのポイント

【呼吸器・肺癌】押さえておきたい薬剤5選と使い分けのポイント
関西医科大学呼吸器腫瘍内科学講座による、 呼吸器疾患・肺癌診療に役立つ情報をお届けする新連載が始まります。 第1回は、「呼吸器疾患でよく使う薬剤5選」 をご紹介します。 (解説医師 : 関西医科大学呼吸器腫瘍内科 山中雄太氏)

はじめに

当講座は、 肺癌を中心に呼吸器疾患、 内科疾患を幅広く診療しております。 肺癌・呼吸器疾患の診療に際し、 出くわす可能性の高い症候に対する的確な対応の為に押さえておきたい薬剤5選と、 各薬剤における使い分けのポイントを紹介します。

【呼吸器・肺癌】押さえておきたい薬剤5選と使い分けのポイント

1.鎮咳薬

呼吸器疾患で一番出会う頻度の高い症候は咳でしょうか。 鎮咳薬は大きく分けて、 「中枢性鎮咳薬」 と 「非中枢性鎮咳薬」 に分類されます。

中枢性鎮咳薬

延髄にある咳中枢を抑制し、 咳を鎮め、 呼吸困難感を和らげる効果が期待できます。 さらに麻薬性と非麻薬性に分類され、効果の高い順に

中枢性麻薬性>中枢性非麻薬性>末梢性鎮咳薬

となります。 中枢性麻薬鎮咳薬は効果の高い一方で、 依存性があり便秘になりやすく、 呼吸抑制作用があるため、 注意が必要です。

表1) 中枢性鎮咳薬の分類と処方例
【呼吸器・肺癌】押さえておきたい薬剤5選と使い分けのポイント
(山中氏提供図表を基に編集部作成)

呼吸器領域で使用頻度が多い中枢鎮咳薬性は、 麻薬性ではコデイン (リン酸コデイン®️)、 非麻薬性ではデキストロメトルファン (メジコン®) です。 また、 2022年1月から8週間以上続く慢性咳嗽に対して、 気道の迷走神経に作用する選択的P2X3受容体拮抗薬ゲーファピキサント (リフヌア®️) が使用可能になりました。 ただし同薬は副作用として味覚障害の出現に注意が必要です。

非中枢性鎮咳薬

去痰薬、 気管支拡張薬、 さらには漢方薬などが該当します。


2.去痰薬

去痰薬は、 「気道粘液修復薬」と「気道分泌促進薬」の2種類に分類されます。 処方においては患者から痰の量や性状について聞き、 病状に応じて使い分けることが重要です。

表2) 去痰薬の分類と処方例
【呼吸器・肺癌】押さえておきたい薬剤5選と使い分けのポイント
(山中氏提供図表を基に編集部作成)

気道粘液修復薬

痰を変化させ排出しやすくし、 気道の粘膜を正常化する

気道分泌促進薬

サーファクタントの分泌を促し、 線毛運動を活性化させ、 気道粘膜の滑りを良くして痰の排出を促す


3.吸入薬

呼吸器領域で使用する頻度の高い吸入薬は、 吸入ステロイド (ICS)、 β2受容体刺激薬、 および抗コリン薬の3つです。

吸入ステロイド

慢性的な気道炎症を抑制し、 喘息やCOPDの症状管理と疾患進行の遅延に重要な役割を果たします。

β2受容体刺激薬

気管支平滑筋のβ2受容体を選択的に刺激し、 気管支平滑筋を弛緩させることで、 気管支を拡張します。

発作時に使用する短時間作用性β2刺激薬 (SABA) と、 長期管理目的に使用する長時間作用性β2刺激薬 (LABA) の2種類に分類されます。

抗コリン薬

気道に存在するムスカリン受容体M3受容体へのアセチルコリンの結合を阻害することで気管支収縮を抑制し、 気管支を拡張させます。 長期管理目的には、 長時間作用性抗コリン薬 (LAMA) が使用されます。

吸入薬の処方ポイント

表3) COPD、 喘息に対する吸入薬の処方例
【呼吸器・肺癌】押さえておきたい薬剤5選と使い分けのポイント
(山中氏提供図表を基に編集部作成)

慢性閉塞性肺疾患 (COPD) は

LAMA → LAMA+LABA → LAMA+LABA+ICS

気管支喘息は

ICS → ICS+LABA → ICS+LABA+LAMA

の順に、 吸入薬をStep upすることが多いです。

また、 剤形も重要な薬剤選択因子になります。 薬剤のStep upの度に剤形が変わると患者に混乱が生じるため、 同じ剤形でStep upしていく方が良いかもしれません。


4.便秘薬

「呼吸器(腫瘍)で便秘薬?」と思う人もいるかと思いますが、 細胞傷害性抗癌薬の有害事象として便通障害の頻度は高く、 便秘薬もよく使う薬の1つになります。

便秘薬は、 腸の蠕動運動を亢進させる 「刺激性下剤」 と、 腸内容物の水分量を増加させ柔らかくし、 排泄を容易にする 「非刺激性下剤」 に分類されます。

表4) 便秘薬の分類と処方例
【呼吸器・肺癌】押さえておきたい薬剤5選と使い分けのポイント
(山中氏提供図表を基に編集部作成)

非刺激性下剤からの開始を推奨

刺激性下剤は効果が出るまでの時間は短いものの、 習慣性があり、 連用によって効果が薄くなるために、 その多くは頓服で処方されます。 従って、 便秘の治療は非刺激性下剤から始めることが推奨されています。


5.解熱鎮痛薬

呼吸器腫瘍内科では、 感染や腫瘍熱、 または転移性骨腫瘍の緩和の目的で、 高頻度に解熱鎮痛薬を使用します。

疼痛マネジメントの1つの目安とされている 「WHO方式三段階除痛ラダー」 で第1段階の処方薬とされているのは、 非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs) とアセトアミノフェンです。

表5) 非オピオイド系解熱鎮痛薬の分類と処方例
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(山中氏提供図表を基に編集部作成)

NSAIDs

NSAIDsはプロスタグランジンの産生を抑え、 解熱・鎮痛・抗炎症作用を示します。 非ステロイド性抗炎症薬によるアスピリン喘息 (NSAIDs過敏喘息) や、 胃腸・腎障害の出現に注意が必要です。

アセトアミノフェン

アセトアミノフェンの作用機序は詳細不明ですが、 解熱・鎮痛作用があります。 抗炎症作用がないことや肝障害の出現に注意が必要です。


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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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