HOKUTO編集部
15時間前

欧州臨床腫瘍学会 (ESMO 2026) が、 10月23~27日にスペイン・マドリードで開催される。 消化器癌からはLate-Breaking Abstractに20演題が採択され、 うち2演題が主要セッションであるPresidential Symposium IIに選ばれた。 本稿では、 Presidential Symposiumおよび口演に採択された消化器癌の演題のうち、 第Ⅲ相試験・最終解析・実診療レベルの無作為化比較試験に絞って編集部が選んだ15演題を、 開幕に先立って予告する。
CLDN18.2陽性の進行・転移性胃癌、 食道胃接合部癌、 食道腺癌の2次治療以降を対象に、 CLDN18.2を標的とする抗体薬物複合体 (ADC) sonesitatug vedotinと担当医選択治療を比較した第Ⅲ相試験である。 開発元のアストラゼネカ社は2026年7月、 3次治療以降の集団および全体の2次治療以降の集団で、 全生存期間 (OS) の有意な改善を示したと公表した。 一方、 全体集団の無増悪生存期間 (PFS) は改善傾向を示したものの、 統計学的有意差には至らなかった。 本セッションでは、 有効性と安全性の詳細が注目される。
2レジメン以上の全身療法歴がある進行胃・食道胃接合部腺癌を対象に、 CLDN18.2を標的とするADCであるarcotatug tavatecanと担当医選択治療を比較した無作為化非盲検第Ⅲ相試験の初回中間解析である。 ❶のCLARITY-Gastric 01と同じCLDN18.2を標的とするが、 本試験の対象は3次治療以降であり、 対象集団の違いを踏まえて結果を読む必要がある。 演者は国立がん研究センター東病院の設楽紘平氏。
HER2陽性の進行・転移性胃食道腺癌の1次治療を対象とした第Ⅲ相試験 (NCT05152147) の2回目の中間解析である。 HER2二重特異性抗体zanidatamab+化学療法に抗PD-1抗体チスレリズマブを併用する群、 併用しない群、 トラスツズマブ+化学療法群の3群を比較した。 zanidatamabを含む治療の長期的な有効性と安全性が注目される。 日本も参加した国際共同試験で、 演者は設楽紘平氏。
タキサンによる前治療歴がある進行・転移胃食道腺癌の2次治療を対象に、 FOLFIRI+ラムシルマブとパクリタキセル+ラムシルマブを比較した第Ⅲ相試験の最終結果である。 国内の2次治療はパクリタキセル+ラムシルマブが標準だが、 周術期や1次治療でタキサンを使用した症例が増えており、 タキサンを再投与しない選択肢が成立するかが焦点となる。
Stage II~IIIBの胃癌を対象に、 術後補助化学療法のカペシタビン+オキサリプラチン (XELOX) を4ヵ月行う群と6ヵ月行う群を比較した無作為化試験である。 大腸癌では術後補助療法の期間短縮が検証されてきたが、 胃癌で投与期間を直接比較した無作為化試験は乏しい。 オキサリプラチンによる末梢神経障害と治療完遂率を考えるうえで、 期間設定の根拠となるデータが示される。
手術を行わない局所進行食道癌・食道胃接合部癌を対象に、 根治的化学放射線療法にペムブロリズマブを上乗せする意義をプラセボと比較した第Ⅲ相試験である。 切除可能例では周術期に免疫チェックポイント阻害薬が導入されている一方、 根治的化学放射線療法との併用で同じ上乗せが得られるかは確立していない。 組織型別・PD-L1発現別の効果と、 根治的化学放射線療法を選択する症例での位置付けが焦点となる。
食道癌の術前化学放射線療法後に臨床的完全奏効が得られた症例を対象に、 定期的な検査で経過を追うactive surveillanceと標準的な食道切除術を比較したクラスター無作為化比較試験の長期成績である。 食道切除術は侵襲が大きく、 手術回避が成立するかは患者のQOLに直結する。 長期の生存成績に加え、 経過観察中に再発した症例で救済手術が成立するかが焦点となる。
MSI-H/dMMRの転移性大腸癌を対象に、 ニボルマブ+イピリムマブ併用、 ニボルマブ単剤、 化学療法の3群を比較した第Ⅲ相試験 (NCT04008030) の最終全生存期間 (OS) 解析である。 無増悪生存期間の結果は既に報告されているが、 併用と単剤のどちらを選ぶかはOSのデータが揃わない段階での判断が続いていた。 併用による上乗せがOSで確認できるか、 また免疫関連有害事象との釣り合いをどう考えるかが焦点となる。
標準治療に抵抗性となった転移性大腸癌を対象に、 トリフルリジン・チピラシル+ベバシズマブの隔週投与と従来法を比較した第Ⅲ相試験。 新たな試験手法である 「プラグマティック (実用的) 臨床試験」を採用し、 国内最大規模で実施された試験である。 有効性の維持と血液毒性の軽減を両立できるかが焦点となる。 演者は愛知県がんセンターの谷口浩也氏。
T4またはN2の高リスクStage III結腸癌を対象に、 術後補助化学療法をmFOLFIRINOXに強化する意義をmFOLFOX6と比較した無作為化第Ⅲ相試験である。 高リスク例の再発率は依然として高く、 術後補助療法の強化は長く検討されてきたテーマである。 イリノテカンの上乗せが無病生存期間を延長するか、 また有害事象と治療完遂率がそれに見合うかが問われる。
大腸癌肝転移の根治的切除を予定する患者を対象に、 ω3系多価不飽和脂肪酸であるエイコサペンタエン酸 (EPA) 製剤とプラセボを比較した多施設二重盲検無作為化第Ⅲ相試験である。 試験薬は術前から開始し、 術後も継続する設計で、 肝転移切除後の再発や生存に対する効果を検証する。 使用製剤や用量の違いも踏まえ、 有効性と安全性を評価する必要がある。
局所進行直腸癌を対象に、 短期術前照射に続いて抗PD-1抗体camrelizumab+カペシタビン+オキサリプラチン (CAPOX) を行う群と、 長期化学放射線療法に続いてCAPOXを行う群を比較した第Ⅲ相試験である。 放射線治療の方法も群間で異なるため、 camrelizumab単独の上乗せ効果ではなく、 免疫療法を組み込んだ術前治療戦略としての有効性と安全性が焦点となる。
進行胆道癌の1次治療を対象に、 PD-1とVEGFを標的とする二重特異性抗体ivonescimabと化学療法の併用を、 デュルバルマブと化学療法の併用と比較した無作為化二重盲検第Ⅲ相試験である。 対照に置かれたデュルバルマブ+ゲムシタビン+シスプラチンはTOPAZ-1試験に基づく現行の標準治療であり、 プラセボ対照ではなく実対照との直接比較である点が特徴である。 二重特異性抗体が既存の免疫チェックポイント阻害薬を上回るかが問われる。
胆管癌・胆嚢癌の根治切除後を対象に、 術後補助化学療法としてゲムシタビン+シスプラチンと標準治療を比較した第Ⅲ相試験 (NCT02170090) である。 試験開始時の対照は経過観察だったが、 その後カペシタビンへ変更された。 国内ではJCOG1202 (ASCOT) に基づきS-1が術後補助療法として用いられており、 国内外の標準治療の違いを踏まえた結果の解釈が求められる。
切除不能・非転移の肝細胞癌を対象に、 肝動脈化学塞栓療法 (TACE) にレンバチニブ+ペムブロリズマブを併用する意義をプラセボと比較した第Ⅲ相試験の長期全生存期間 (OS) 解析である。
無増悪生存期間の改善は既に報告されている一方、 OSでは有意な改善が示されず、 2025年10月に試験終了が公表されている。 今回は長期追跡でのOSの詳細が報告される。
本稿に採らなかった演題では、 dMMR/MSI-Hの局所進行直腸癌に対するdostarlimab単剤療法の臨床的完全奏効 (AZUR-1)、 肝細胞癌における肝機能の推移と増悪後アウトカム (EMERALD-3) も注目される。 膵癌ではKRAS G12D阻害薬INCB161734と化学療法の併用や、 切除後のKRAS標的免疫療法 (AMPLIFY-7P)、 大腸癌ではBRAF V600E変異例に対する再投与・増悪後継続戦略 (BRICKET、 ECLYPse、 TRIDENTE) が報告される予定である。
ESMO 2026における消化器腫瘍の注目演題は、 国立がん研究センター中央病院頭頸部・食道内科の山本駿先生、 同センター東病院肝胆膵内科医長の今岡大先生にご解説いただく予定です。


HOKUTOでは各演題のレポートを順次公開予定。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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