HOKUTO編集部
11ヶ月前

広島大学病院 脳神経内科の音成 秀一郎先生による新連載 「脳波クイズ ER/ICU脳波-意識障害編-」 です。 第2回は、 アルコール多飲の高齢者の症例です。 症例は架空の設定となります。
アルコールに関連した発作を繰り返していた高齢者。 認知機能低下により単身生活は困難と判断され、 現在は施設に入所中である。
朝、 施設職員が訪室すると、 ベッド上でけいれんしている本人を発見した。 これまでにも発作様のエピソードは複数回あったが、 いずれも1, 2分で自然軽快していたため今回も経過観察がなされた。 しかし今回は発見から10分経過してもおさまらず、 救急要請に至った。 なお発作がいつから始まっていたのかは不明である。 またレベチラセタム100mg/日を内服中で、 前日の夜分は服用できていた。
ジアゼパム1Aの静注で鎮痙を得た。 頭部MRIでは、 過去のアルコール多飲歴に関連したびまん性の脳萎縮があるほかに新規の異常所見はなかった。 意識障害が遷延するため、 翌日に脳波検査を実施した。

過去のアルコール多飲歴が特徴的なこの症例、 皆さんであればどのように脳波を読み解きますか?
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▼てんかん性の要素はRPPsで判断
意識障害の脳波の評価として、 てんかん性の要素があるかどうかは rhythmic and periodic patterns (RPPs) で判断します。 具体的には periodic discharges (PDs) や spike and wave (SW)、 rhythmic delta activity (RDA) の有無をチェックします。
この症例の脳波ではPDsを認めます。 PDsとは 「同じような尖った形の波形がおおよそ一定の周期で繰り返し出現しているパターン」 を指します。

▼PDsの解釈では尖った波形の発火頻度が重要
今回のPDsは上図の白矢印で示しているように、 その分布としては左側頭部なので、 lateralized PDs (LPDs) と表現します。 PDsの解釈においては、 尖った波形の発火頻度が重要になります。 なぜなら、 高発火であればあるほど発作の可能性が出てくるからです。 具体的には10秒で25個以上 (2.5Hz) のPDsがあれば発作と判断します。 PDsの発火頻度の数え方としては、 1ページのうちに何回繰り返されているかでカウントすると簡単です (だいたい1ページが10秒表示になっているため)。
今回のサンプルでは、 1ページで8回繰り返されていますので0.8HzのLPDsと判定できます。 その解釈としては、 1Hz未満と低頻度のサイクルなので 「現在進行形の発作活動はない」 と判断して良いでしょう。 すなわち現段階ですぐの追加治療は不要と言えます。 よって、 発作の再発予防としてレベチラセタムの維持量を投与しつつ経過をフォローする方針で良いでしょう。
▼発作のリスクがやや高まるPDs+Fの所見
ただし、 拡大図を見てもわかるように (赤矢頭)、 それぞれのPDsには速波 (F: fast) の重畳があります。 このようなパターンをPDs+Fと表現し、 発作のリスクがやや高まる所見です。 よって早めに脳波をフォローしつつ、 病勢が治りつつあるのか、 まだ不安定なのか経過を追うと良いでしょう。 理想的には脳波モニタリングができると良いと思います。


はじめての脳波トリアージ
2ステップで意識障害に強くなる
Antaa Slide Award 2021を受賞した著者が、 背景活動×てんかん性の所見で脳波を切り分け、 意識障害の鑑別を最速化する鑑別のコツを伝授。 ICUでの強力な武器を身につけて、 目指せ!デキるレジデント!

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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