HOKUTO編集部
5ヶ月前
転移性去勢抵抗性前立腺癌 (mCRPC) に対する1次治療としてのPARP阻害薬タラゾパリブ(TLZ) +エンザルタミド (ENZ) 併用療法の有効性と安全性を、 プラセボ+エンザルタミドを対照に検討した第Ⅲ相プラセボ対照二重盲検無作為化比較試験TALAPRO-2。 ASCO GU 2025では同試験のコホート1、 コホート2のOS最終解析結果がそれぞれ報告されました。同試験に関して、 がん研有明病院総合腫瘍科部長の三浦裕司先生にご解説いただきました。
米国臨床腫瘍学会泌尿器癌シンポジウム (ASCO GU 2025) が2月13~15日に米・サンフランシスコで開催され、 例年通り、 1日目は前立腺癌を中心とした演題が発表されました。
一番の目玉はTALAPRO-2試験のOS最終解析結果が発表されたことでした。 Oral sessionではHRR遺伝子変異の有無を問わないコホート1の結果が発表され (LBA18)、 HRR遺伝子変異陽性のコホート2の結果はポスターで発表されました (LBA141)。
TALAPRO-2試験は、 mCRPCの1次治療として、 タラゾパリブ (TLZ) +新規アンドロゲン受容体シグナル阻害薬 (ARSI)エンザルタミド (ENZ) 併用療法の効果を検証した第III相試験です。
同試験のコンセプトは 「TLZ+ENZ併用療法がHRR変異の有無に関わらず、 効果を発揮するか」 を検証することでした。 そのため、 試験デザインがやや複雑で、 HRR変異の有無を問わない全患者 (805例 : コホート1) とHRR変異陽性の患者 (399例 : コホート2) の2コホートで実施されました*。
TALAPRO-2試験における試験デザインの最も大きな強みは、 登録時点で前向きにHRR変異を検査し層別化因子に加えることにより、 バイアスがより少ない状態で、 HRR変異の影響を検証できる点となります。
既報の同試験の初回解析では、 全患者のコホート1において、 主要評価項目である放射線学的無増悪生存期間 (rPFS) の有意な改善が認められています。 今回、 主要な副次評価項目であるOSでも有意な改善が示されました (HR 0.796 (95%CI 0.661-0.958)、 p=0.0155)。
また、 TLZ+ENZ群のOS中央値 (mOS) は45.8ヵ月と、 これまでに実施されたmCRPCに対する1次治療の試験で最長の結果となりました。
HRR変異を持たない症例における探索的サブグループ解析では、 mOS 46.6 vs. 37.4ヵ月とTLZ+ENZ群で9.2ヵ月の数値的な改善を認めたものの、 HRは0.782 (95%CI 0.582-1.050)であり、 明確な結論には至りませんでした。
このようにTALAPRO-2試験は、 「HRR遺伝子変異の有無に関わらず」 というチャレンジングな仮説をOSのITT解析で証明したものの、 ディスカッサントを含め、 全体の論調としては、 やはり 「遺伝子検査による症例の選別が重要だろう」 という結論でした。
>> コホート1の結果詳細はこちら
一方、 HRR変異陽性例 (併用群200例、 プラセボ群199例) のみのコホート2の結果については、 現在の各国の承認状況に影響を与える可能性があり、 こちらも注目されます。
コホート1と同じく、 主要な副次評価項目であるOSのHRは0.622 (95%CI 0.475-0.814)、 p=0.0005と有意な改善を認めました。 また、 BRCA1/2変異陽性例 (各群71例、 84例) では、 HR 0.497 (同 0.318-0.776)、 p=0.0017、 非BRCA1/2変異例 (各群129例、 115例) では、 HR 0.727 (95%信頼区間 0.516-1.024)、 p=0.0665となりました。
現時点で、 国内外におけるTLZ+ENZ併用療法の承認状況は以下のとおりです。
今回の結果を受けて、 各規制当局が適応症の変更を考えるのかについても、 今後注目したいところです。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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