Jänne PAらは、 KRASG12C変異NSCLC患者を対象に、 KRASG12C阻害剤 「アダグラシブ」 の有効性と安全性を検討する第Ⅱ相コホート試験を実施 (KRYSTAL-1試験). その結果、治療歴のあるKRASG12C変異NSCLC患者において、 アダグラシブは臨床的有効性を示した. 本研究はNEJM誌において発表された.
背景
- アダグラシブはKRASG12C阻害剤であり、 KRASG12Cと不可逆的かつ選択的に結合し、 不活性状態にし続ける.
- アダグラシブはKRYSTAL-1第Ⅰ・Ⅱ相試験の第Ⅰ-1b相試験で臨床活性を示し、 有害事象プロファイルも許容範囲内であった.
研究デザイン
- プラチナ製剤を用いた化学療法および抗PD-1療法、 抗PD-L1療法の治療歴のあるKRASG12C変異NSCLC患者116名が対象.
- アダグラシブ投与 (600mg 1日2回経口).
- 主要評価項目:盲検化された独立した中央審査により評価された客観的奏効.
- 副次的評価項目:治療奏効期間、 無増悪生存期間 (PFS)、 全生存期間 (OS)、 安全性.
研究結果
有効性評価
- 試験開始時に測定可能な病変を有していた112名のうち、 48名 (42.9%) の客観的奏効を確認した.
- 奏効期間中央値:8.5カ月 (95%CI 6.2~13.8)
- 無増悪生存期間中央値は6.5カ月 (95%CI 4.7~8.4)
- 全生存期間中央値:12.6カ月 (95%CI 9.2~19.2)
- 治療歴のある安定した中枢神経系転移を有する患者33名のうち、 頭蓋内確認客観的奏効率は33.3% (95%CI 18.0~51.8) であった.
安全性評価
- 治療関連有害事象は97.4%に発生した.
- グレード1または2:52.6%
- グレード3以上:44.8%
(グレード5の事象2件を含む)
結論
治療歴のあるKRASG12C変異NSCLC患者において、 アダグラシブは新たな安全性に問題なく臨床的有効性を示した.
原著
Jänne PA, et al, Adagrasib in Non-Small-Cell Lung Cancer Harboring a KRAS G12C Mutation. N Engl J Med. 2022 Jun 3. doi: 10.1056/NEJMoa2204619. PMID: 35658005
👨⚕️HOKUTO監修医コメント
スピード感がすごいですね. 2022年1月まで観察して6月にはEpubとは…逆にいうと、それだけ長期アウトカムが観察できない対象群と言えてしまうのかもしれません.