海外ジャーナルクラブ
1年前
北海道大学大学院医学研究院の豊嶋崇徳教授らの研究グループ (筆頭著者: 千丈創氏) は、 同種造血幹細胞移植 (HCT) 後の移植片対宿主病 (GVHD) の予防として標準的に用いられるカルシニューリン阻害薬のシクロスポリンが、 ドナーT細胞の疲弊を抑制し、 活性の高い一過性疲弊T細胞を誘導することで、 逆に慢性GVHDの発症に繋がることを発見した。 本研究はBlood誌において発表された。
本邦より基礎研究・臨床医学の観点から、 GVHDの新しいメカニズムを発見した報告です。 シクロスポリンは "諸刃の刃"の治療薬であるということですね。 造血幹細胞移植は医療の歴史を変えた素晴らしい治療ですし、 今後の課題解決の一歩となることを期待します。
マウスモデルにおけるドナーT細胞の網羅的遺伝子発現解析において、 HCT後に標準的に用いられるGVHD予防薬であるカルシニューリン阻害薬シクロスポリンの投与が、 ドナーT細胞の疲弊を抑制し、 活性の高い一過性疲弊T細胞を誘導することで、 逆に慢性GVHDの発症に繋がることを発見した¹⁾。
さらに、 一過性疲弊T細胞が、 免疫チェックポイント阻害薬を用いることで活性化し、 造血幹細胞移植後の白血病再発を抑制することも解明した¹⁾。
HCT後のカルシニューリン阻害薬の投与が慢性GVHDを効果的に抑制できないという、 長年の疑問を解明する知見が示唆された¹⁾。
さらに、 一過性疲弊T細胞の定量は、 GVHDの発症や免疫チェックポイント阻害薬への治療反応性を予測するバイオマーカーとして臨床応用されることが期待される¹⁾。
1) Blood. 2023 Aug 3;142(5):477-492.
2) 北海道大学プレスリリース 「移植⽚対宿主病の新たな発症機序を解明 〜より安全かつ有効な造⾎幹細胞移植への貢献に期待〜」 (2023年8月3日)
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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