HOKUTO編集部
9ヶ月前

日常診療で対応に苦慮することが多い不眠症。 睡眠障害のプロフェッショナルである松井健太郎先生に、 不眠症の診断や治療に役立つ知識をわかりやすく解説いただきます!
不眠症状は成人の10~20%が抱えるとされる、 極めて頻度の高い健康問題である¹⁾。 不眠症状は入眠障害、 睡眠維持困難、 早朝覚醒に大別されるが、 若年者と高齢者では、 その典型的なパターンが大きく異なる。
本稿では、 不眠症状のタイプ別特徴と年齢による違いについて解説し、 実臨床での対応について述べる。
不眠症の国際的な診断基準²⁾では、 入眠障害、 睡眠維持困難、 早朝覚醒の3つの中核症状に加え、 これらによる日中の機能障害が週3回以上、 3ヵ月以上持続することが診断要件とされている。
なお、 一口に 「不眠症」 といっても複数の症状がある。 各症状の定義を以下に示す。

不眠症の症状は、 年齢により出現頻度が異なる。 若年者は入眠障害に悩むことが多いが、 高齢者では睡眠維持困難、 早朝覚醒が相対的に多い³⁾。
このような年齢による不眠症状の違いは、 典型的な症例の年齢間の違いで説明できるかもしれない。
若年者の 「寝つけない」 悩みの原因として、 睡眠・覚醒相後退障害 (Delayed Sleep-Wake Phase Disorder: DSWPD) が多く含まれている可能性がある。
DSWPDは望ましい就床時刻に入眠できず、 また望ましい起床時刻に覚醒できない状態が続くことが特徴で、 概日リズム睡眠・覚醒障害の一型である²⁾。
典型例では、 午前2~3時まで入眠できず、 また自然に任せれば午前10~11時まで睡眠が持続することから、 入眠障害に加え、 社会的に望ましい時刻に起床できないことが問題となる。
若者に多いDSWPD患者に対しては、 十分な生活指導が必要である。 また、 メラトニン受容体作動薬を中心とした薬物療法の適応となる⁴⁾。
ただし、 一般的な睡眠薬は効きにくい印象があり、 「不眠症なのか、 DSWPDなのか」 の鑑別が重要である。
高齢者は 「そもそも長く寝られない」
高齢者の不眠症状の背景にしばしばあるのが、 長時間臥床の問題である。 65歳以上であれば夜間の睡眠時間は6時間程度で十分である⁵⁾。 そのため、 「8時間寝たい」 といった患者の希望は、 そもそも無理を言っていることになる。
高齢者が長時間横になっていると不眠症状が難治化しやすいが、 それは単に 「そんなに長くは寝られないから」 である。
指導のキャッチフレーズは 「遅寝早起き」
そこで、 「夜更かしをするか、 朝早起きをするか」 で (「どちらも」 でも良いのだが)、 臥床時間を短くするよう指導している。 キャッチフレーズは 「遅寝早起き」 である。
「朝、 布団から出る時刻を早めるのは、 自身の努力では難しいのでは?」 という見地から、 私は夜更かしをおすすめすることが多い。
ところが患者さんからは、 「夜更かしをしようと思ってもやることがない」 「疲れてしまうので早く横になりたくなる」 と言われてしまう。 例えば 「テレビも面白い番組はやってないし、 本を読もうにも目が疲れて...結局床に入ってしまうんです」 なんて具合である。
睡眠日誌の活用、 夕方以降の活動を提案
このような場合、 まず睡眠日誌を用いて実際の睡眠時間と臥床時間を可視化することが有用である。 「8時間寝なければ!」 といった思い込みを修正し、 加齢により必要な睡眠時間が減少することを説明する。
さらに夕方以降の活動として、 軽い散歩やラジオの視聴、 家族との電話など、 個々の生活状況に応じた具体的な提案を行うと良いかもしれない。
不眠症状は年齢により大きく異なり、 若年者では入眠障害が、 高齢者では睡眠維持困難と早朝覚醒が主体となる。
特に高齢者の長時間臥床は、 不眠を悪化させる要因である。 「遅寝早起き」 の指導が重要だが、 実生活での実践には個別の工夫が必要である。


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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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