医師4人医業停止…処分基準は?
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HOKUTO通信

9ヶ月前

医師4人医業停止…処分基準は?

医師4人医業停止…処分基準は?

厚生労働省は7月、 有罪判決を受けた医師4人を医業停止にするなどの行政処分をした。 医師免許取り消しは発表されなかったが、 行政処分の基準はどこにあるのか。

行政処分は3種類

厚労省による行政処分は3種類あり、 ほかに処分には至らない行政指導がある。 (下図参照)

医師4人医業停止…処分基準は?

処分決定は 「医道分科会」

どんな行為をすると行政処分を受けるのか、 誰がその決定をしているのか、をみてみよう。

まず、 行政処分の内容を実質的に決定しているのは、「医道審議会」 という諮問機関にある医道分科会だ。 最終的な決定権者は厚生労働大臣だが、 分科会の意見がほぼそのまま反映される。

医師4人医業停止…処分基準は?

罰金以上の刑に処せられた医師の情報は、 法務省から厚労省に情報提供される。 医道分科会ではこれらの情報を基に、 10人前後の委員が行政処分や再免許の妥当性について審議する。

分科会は毎年度2〜3回の頻度で開催されるが、 審議内容は原則非公開で、 実際にどんな検討がされていたか分からない。 そこで公平性・透明性を高め、 判断が恣意的にならないよう、 処分の目安となるガイドライン 「行政処分の考え方」 が公表されている。

処分目安は大雑把

ガイドラインでは 「司法の量刑や執行猶予の有無などを参考にすることを基本とする」 とした上で、 「医師に求められる倫理に反する行為と判断される場合は厳しく判断する」としている。 当たり前のことだが、 重大な犯罪をすれば刑事処分の量刑は重くなり、 その分行政処分も重くなる可能性が高くなる。

ただ、 処分の目安はかなり大雑把。 さらに個別の事情も勘案するため、 目安と最終的な処分結果がかけ離れることもあることもある。

厳罰化される3つの傾向

目安は 「重い処分」 と 「重めの処分」の2段階。 違いが分かりづらいが、 過去の処分事例などを照らし合わせると、 おおよそ次のようになる。 その他は一番軽い 「戒告」 が基本となる。

医師4人医業停止…処分基準は?

こちらを事例別にカテゴリー分けしてみよう。 全体として、以下のいずれかに該当した場合、 処分が一段と厳しくなる傾向にある。

医師4人医業停止…処分基準は?

気をつけたい事案

悪意がなくても、 可能性としては誰でもあり得る事案。 よほど悪質でなければ免許取り消しには至らないケースが多い。

交通事犯(過失運転致死傷、 道交法違反)

  • 基本的に戒告。 医師に限らず不慮に起こしうる行為で、 医師の業務と関連性がなく、 品位を損なう程度も低い。
  • ただし、 ひき逃げなど悪質な場合は、 重めの処分。

医療過誤

  • 明らかな過失、 繰り返し行われた過失など医師として通常求められる注意義務が欠けている場合、 重めの処分。
  • それ以外のケースは、 病院の管理体制などを総合的に考慮して処分の程度を判断。

医師の職業倫理に反する行為

医師法違反

  • 重い処分。 無資格者への名義貸し、 無診察治療など。

薬機法違反

  • 重い処分。 医薬品の無許可販売など。

覚醒剤取締法違反など

  • 有害性を十分認識しているにもかかわらず、 自ら違反した点を鑑みて重い処分。 麻薬・向精神薬、 覚醒剤、 大麻の不法所持など。

立場を悪用した行為

性犯罪

  • 診療の機会に医師としての立場を利用した場合、 重い処分。 強制わいせつや盗撮など

贈収賄

  • 医師の業務に直接関わらないが、 医師の信頼感を喪失させることから行政処分の対象。
  • 医師の地位や立場を利用し、 悪質と認められる事案は重めの処分

詐欺・窃盗

  • 医師の業務に直接関わらないが、 品位を損ない、 信頼感を低下させるため行政処分の対象
  • 特に、 医師の立場を利用し、 虚偽の診断書を作成、 交付するなどの方法で詐欺罪に問われるような行為は業務に関連した犯罪は重い処分

文書偽造

  • 詐欺に至らないものの、 虚偽の診断書を作成・交付し、 医師の立場を利用するなどの悪質性が認められる場合、 重めの処分

その他

凶悪・粗暴犯

  • 殺人や傷害致死は当然重い処分
  • 単なる暴行、 傷害は医師としての立場や知識を利用したか、 犯行に及んだ情状を考慮 して判断

診療報酬の不正請求

  • 保険医の取消を受けた事案は、 不正額の多寡に関わらず、 一定の処分。
  • 特に悪質性の高い事案は、 より厳しい処分。

税法違反

  • 診療収入に係る脱税など医業に係る事案は重めの処分。 所得税法違反、 法人税法違反、 相続税法違反など
※この記事は2023年3月13日、 20日付で配信した内容を加筆・修正したものです。

参考資料

厚労省 医道審議会医道分科会「医師及び歯科医師に対する行政処分の考え方について

こちらの記事の監修医師
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HOKUTO編集部
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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