訴訟の多い診療科は?医療裁判の統計
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28日前

訴訟の多い診療科は?医療裁判の統計

訴訟の多い診療科は?医療裁判の統計
医療訴訟が珍しくなくなった今、 医師は法律と無関係ではいられない。 連載 「臨床医が知っておくべき法律問題」 11回目のテーマは 「医療裁判の統計~訴訟の多い診療科は?~」。

医療訴訟はピーク時の半分

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【図1】最高裁ホームページより筆者作成

「医療裁判は増えているのか」 と講演会などでよく聞かれる。 最高裁の統計によれば、 2004年をピークに減少傾向にあることがわかる【図1】。 現在はピーク時の約半分だ。 近年の減少には、 コロナウイルス感染拡大の影響もある。

診療科別では?

統計上の注意点

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写真はイメージです

診療科別でみるとどうだろうか。 あくまで医療専門ではない裁判所の統計なので、 「外科」 の中に心臓血管外科、 消化器外科、 呼吸器外科、 脳神経外科などが含まれている点に注意が必要だ。 「内科」 も消化器、 循環器、 神経内科などを全部ひっくるめている。

他にも▷美容整形について、 美容外科医の手術なら 「その他」、 形成外科医の手術なら 「形成外科」 にそれぞれ分類される▷手術の事案はほとんど、 「外科」 「産婦人科」 といった手術の執刀主体の診療科のカウントとなり、 麻酔科の領域である輸液・輸血管理や麻酔薬の問題でのトラブルは、 数字上適切に反映されない――などの問題点がある。

訴訟提起の目的

以上を踏まえ、 【図2】をみてほしい。

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【図2】最高裁ホームページより筆者作成

意外に生死にかかわる診療科の数字が大きくないことに気づくであろう。 整形外科は、 交通事故などのトラブル案件に関わることが多い。

一方、 訴訟が多いイメージのある産婦人科はどうか。 医療訴訟の最盛期には割合的にも現在の2倍以上であったが、 産科医療補償制度で脳性麻痺に3000万円払うようになって一気に減少した。 医療訴訟の原告は、 結局は金銭目当てが多いことがうかがわれる数字である。

「和解」 が多い医療訴訟

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裁判の提起は、 出るところに出て 「白黒つける」 のが目的である。 法律に基づく裁判官の司法判断を仰いで最終決着とするのが法治国家のルールであり、 そのようなルールが通用しない国際社会では、 ウクライナ侵攻や竹島の不法占拠などが横行する。

しかし、 裁判の出口が裁判官の判断、 すなわち判決とは限らない。 実際、 原告と被告が譲歩して解決するケースは多い。 いわゆる 「和解」 という形だ。 医療訴訟では、 その傾向は顕著で、 半数が和解で解決する【図3】

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【図3】筆者提供

理由は以下が考えられる。

  • 裁判官は医療のことは基本的に無知であるから、 「妥当な解決」 というのがそもそもわからない。
  • 医療上の判断は、 医師によって見解は多様。 和解で終了すれば、 上訴されることはなく、 事件を完全に終了させたということで、 裁判官の処理ポイントとなる。
  • 患者側の代理人弁護士にとっては、 和解で金銭が動けば報酬になる。
  • 判決でゼロになれば、 依頼人から恨まれるリスクもある。
  • 医師や病院側の代理人弁護士にとっては、 一般的に成功報酬は、 訴訟で勝ったかどうかではなく、 請求額をどの程度減らしたかで決められている。
  • 旧日弁連報酬規程や、 損害保険会社の規定。 仮に1億円の請求で5000万円を支払うのは、 実質的に敗訴と言えるが、 5000万円減額させたとして成功報酬が得られる。
  • 病院や医師にとっても、 早期に終わることのメリットは大きい。

判決にまでもつれ込んだら、 「控訴率」 が高い

では判決になったら、 どのような結論になるのだろうか。 ここ10年は、 原告側の勝訴率がおおよそ2割で推移している【図4】患者側にとってみれば、 勝訴率は低く、 和解ならいくらかもらえる見込みがあるので、 弁護士はよろこんで訴訟を引き受けるのである。

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【図4】筆者提供

ただ、 医療訴訟の依頼人となる原告は、 お金以外に、 医師への 「恨み」 といった感情優先で訴訟を起こすケースも多い (人格訴訟と呼んだりする)。 この場合、 1審で敗訴しても、 高裁に控訴する確率が高いのも医療訴訟の特徴。 令和4年度 (2022年度) の統計だが66.9%に及び、 一般事件 (20.8%) の3倍超に上るのである。

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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