海外ジャーナルクラブ
9日前
Chenらは、 HER2陽性早期乳癌患者を対象に、 術前療法としてトラスツズマブ+ペルツズマブにnab-パクリタキセル (nab-PTX) を併用したde-escalation治療の有効性と安全性を多施設第Ⅲ相無作為化比較試験HELEN-006で検討した。 その結果、 nab-PTXを併用した治療は標準治療群 (トラスツズマブ+ペルツズマブにドセタキセル+カルボプラチンを併用) に比べ、 病理学的完全奏効 (pCR) において優れている可能性が示唆された。 本研究はLancet Oncol誌にて掲載された。
無イベント生存期間 (EFS) や全生存期間 (OS) などの、 長期アウトカム結果が注目されます。
HER2陽性乳癌に対する術前療法は、 腫瘍縮小による手術適応の拡大と予後改善を目的としている。 先行する第Ⅱ相試験では、 パクリタキセル、 トラスツズマブ、 ペルツズマブを用いたde-escalation治療が有望な結果を示した。
本試験では、 トラスツズマブおよびペルツズマブにドセタキセル+カルボプラチンを併用する標準療法とnab-PTXを併用した治療法の有効性と安全性を比較・評価することを目的とした。
HER2陽性、 ステージⅡ/Ⅲの未治療浸潤性乳癌で18~70歳、 ECOGパフォーマンスステータス (PS) が0または1の患者を登録した (689/789例を無作為化)。 患者は腫瘍のステージ、 リンパ節の状態、 ホルモン受容体の状態により層別化され、 1 : 1の割合で無作為に割り付けられた。
主要評価項目は病理学的完全奏効 (ypT0/is ypN0) に設定された。
pCR達成率はnab-PTX併用群で66.3% (95%CI 61.2-71.4)、 標準療法群で57.6% (95%CI 52.3-62.9) であった (複合OR 1.54、 95%CI 1.10-2.14、 p=0.011)。
Grade3/4の有害事象はnab-PTX併用群で30% (100/343例)、 標準療法群で38% (128/346例) で確認された。 頻度の高いGrade3/4の有害事象は以下の通りであった。
悪心
- nab-PTX併用群 : 7%
- 標準療法群 : 23%
下痢
- nab-PTX併用群 : 8%
- 標準療法群 : 16%
神経障害
- nab-PTX併用群 : 13%
- 標準療法群 : 2%
また、 重篤な薬物関連有害事象はnab-PTX併用群の1%、 標準療法群の2%に確認された。 両群ともに、 治療関連死の報告はなかった。
著者らは 「nab-PTXを用いた術前療法は、 pCR率で標準療法を上回り、 有害事象も少ないことが示された。 この結果は、 標準レジメンと比較して潜在的な利点があることを示唆しており、 この新しい併用療法がHER2陽性の早期乳癌患者における術前療法の新たな標準となる可能性を示唆している」 と報告している。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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