HOKUTO編集部
4ヶ月前
人気連載 「がん遺伝子パネル検査の基礎知識」 の廣島幸彦先生による連載です。 前立腺がん遺伝子パネル検査に関する疑問を解決します!
一般的に、 去勢抵抗性前立腺がん (CRPC) におけるBRCA遺伝子変異の保有率は10~15%前後と報告されている¹⁻³⁾。 自験例では、 BRCA2変異は13.0% (25/192例) に認められ、 免疫チェックポイント阻害薬の対象となるTMB-high症例を含めると、 治療到達率は約15%であった。
この数字は、 他のがん種と比較して必ずしも高いわけではない。 しかし、 治療選択肢が限られるCRPCにおいて 「約15%の患者に新たな治療の可能性が生まれること」 は、 臨床的に非常に重要である。
実際に、 PARP阻害薬オラパリブの適応となった患者では、 PSAの低下がほぼ全例で確認されている。 これは、 がん遺伝子パネル検査 (CGP) によるBRCA2変異の検出が、 治療効果の高い標的治療に直結し、 予後を改善し得ることを示唆している。
では、 どのような患者にBRCA変異が見られやすいのだろうか?現状、 この明確な傾向を把握するのは難しいと言わざるを得ない。
BRCA2変異は比較的若年に多く、 ホルモン抵抗性になる期間が短いという報告⁴⁻⁶⁾がある。 しかし、 以下に示すように自験例では年齢および内分泌療法治療期間に有意な差は認められず、 高齢や10年前後の治療歴のあるBRCA2変異例が散見されている。
このことからも、 「特定の臨床背景を持つ患者だけを対象にCGPを提出する」 という方針では、 治療の恩恵を受けられる可能性のある患者を見逃してしまうリスクがあると考えられる。
CRPCにおける遺伝子パネル検査の治療到達率は決して高くはない。 しかし、 治療効果の高い保険適用薬につながっており、 対象を絞らずにCGPを提出することは、 治療機会を逃さないための現実的な方針といえる。
また、 対象となるPARP阻害薬や免疫チェックポイント阻害薬は80歳代の患者でも安全に投与可能である。 特に細胞障害性抗がん薬の適応とならない高齢者において、 CGPは 「副作用の少ない治療につながる検査」 としての意義も大きいと考えられる。
CRPCにおけるCGP検査は、 治療効果が高く、 高齢者にも投与可能な標的治療につながる検査としての意義が、 他のがん種よりも大きいと考えられる。 現在、 1次治療でのアンドロゲン受容体シグナル阻害薬 (ARSI) +PARP阻害薬併用療法の有効性が報告され、 前立腺がんにおけるCGP検査のタイミングについて議論されている。 (詳細は次回以降に解説)
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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