仲野 兼司(がん研有明病院 総合腫瘍科)
2ヶ月前
2020年代に入り、 免疫チェックポイント阻害薬 (ICI)、チロシンキナーゼ阻害薬 (TKI) などの進化により、泌尿器癌領域の薬物療法は大きな変革を遂げています。 2025年2月13~15日には、 米国臨床腫瘍学会泌尿器癌シンポジウム (ASCO GU 2025) が開催されました。 本シリーズでは、がん薬物療法の各領域において注目度の高い論文およびトピックについて、がん研有明病院 総合腫瘍科の仲野兼司先生にご解説いただきます。2回目となる本記事では、 腎細胞癌の薬物療法に関するトピックをまとめて紹介します。
進行・再発腎細胞癌に対する1次治療として、 ICIとTKIの併用が標準治療となっています。 2024年には、 第III相試験CLEARの最終解析が報告され、 ペムブロリズマブ+レンバチニブ療法の全生存期間 (OS) 中央値が57.3ヵ月 (95% CI: 48.7-Not estimable) であることが示されました。
🔹 CLEAR試験 (ペムブロリズマブ + レンバチニブ vs. スニチニブ)
1次治療としてICI併用療法が普及する中、 再投与の効果が問われています。 2023年と2024年に報告された以下の試験では、 ICIの再投与はOSを改善しないという結果が示されました。
🔹 CONTACT-03試験 (アテゾリズマブ + カボザンチニブ vs. カボザンチニブ単独)
🔹 TiNivo-2試験 (ニボルマブ + tivozanib vs. tivozanib単独)
これらの結果を踏まえ、 後方ラインで新たな作用機序を持つ薬剤の導入が求められています。
後方ラインの新たな治療選択肢として、 VHL遺伝子の機能不全に伴い活性化されるHIF-2αを標的としたHIF-2α阻害薬ベルズチファンが注目されています。
🔹 LITESPARK-005試験 (ベルズチファン vs. エベロリムス)
この試験では、 ベルズチファンがOSを有意に延長しました。 この結果を受け、 日本でも2024年7月にベルズチファンの承認申請が行われており、 今後の実臨床での使用が期待されています。
📄 PubMed論文情報 「LITESPARK-005試験」
腎細胞癌に対する術前・術後補助療法として、 現在のところ予後延長効果が示されているのはペムブロリズマブのみです。 KEYNOTE-564試験の最終解析では、 ペムブロリズマブが無病生存期間に加えてOSも延長することが示されました。
🔹 KEYNOTE-564試験 (術後ペムブロリズマブ vs. プラセボ)
この結果を受け、 術後補助療法としてのペムブロリズマブの役割が確立されつつあります。
ベルズチファンは単剤だけでなく、 既存のTKIやICIとの併用療法についても臨床試験が進められています。
🔹 LITESPARK-003試験 (ベルズチファン + カボザンチニブ)
2025年初めには、 ベルズチファンとカボザンチニブの併用療法による有効性が報告されており、 今後、 1次治療での適応拡大が期待されます。
📄 PubMed論文情報 「LITESPARK-003試験」
転移性腎細胞癌において、 原発巣の切除を行うべきかどうかについて、 現在も議論が続いています。 従来、 TKI単独療法が標準治療であった時代に実施された以下2件の試験や、 それらが含まれた2024年のメタアナリシスでも、 結論は出ていません。
🔹 CARMENA試験 (スニチニブ単独 vs. 腎摘出後スニチニブ)
🔹 SURTIME試験 (腎摘出後スニチニブ vs. スニチニブ後腎摘出)
🔹 最新メタアナリシス (Cochrane Database Syst Rev, 2024)
現在の、 ICI併用TKI療法時代において、 改めて原発巣切除の意義を検討することが求められています。
📝レジメン
専門 : 腫瘍内科 (骨軟部腫瘍、 頭頸部腫瘍、 原発不明癌、 希少がん、 その他がん薬物療法全般)
一言 : がん薬物療法に関する論文を中心に、 勉強した内容を記事にしています。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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