海外ジャーナルクラブ
26日前
Aleixoらは、 成人の進行固形癌患者を対象に、 癌治療における 「低用量から開始し、 漸増する (Start low, go slow : SLGS) 」 戦略の有効性を系統的レビューとメタ解析で検討した。 その結果、 SLGS戦略が毒性を軽減しつつ一定の治療効果を維持する可能性が示唆された。 本研究は、 J Geriatr Oncol誌に発表された。
治療戦略を比較検討する、 大変斬新な系統的レビューです。
標準用量の癌治療は、 高齢患者の機能的能力の低下につながる可能性がある。 "Start low, go slow" (SLGS) 戦略では、 毒性に弱い特定の患者に対して標準用量よりも低い用量で治療を開始し、 忍容性に基づいて増量する。
本研究では高齢の難治性固形癌患者の治療におけるSLGS戦略の有効性を評価するため、 系統的レビューとメタ解析を実施した。
複数のデータベース (PubMed、 Medline、 J Geriatr Oncol、 米国臨床腫瘍学会 (ASCO) の抄録、 EMBASE) を調査し、 SLGS戦略による治療を受けた固形腫瘍患者を対象とした前向き研究を網羅的に検索した。
主要評価項目はSLGS戦略で治療した患者の全生存期間 (OS)、 副次評価項目はSLGS戦略で治療した患者の治療中止率およびGrade3・4の毒性発生率に設定された。
死亡率
12件の研究がOSを評価していたが、 高齢者に焦点を当てた研究は5件のみであり、 特定のパターンに従うことなく、 さまざまな種類の癌を対象とした研究であった。
3件の研究におけるOSのメタ解析では、 SLGS戦略による治療を受けた患者の死亡率が低かった 〔ハザード比 (HR) 0.91、 95%CI 0.85-0.98、 p=0.01〕。
毒性発生率
6件の研究を解析したところ、 毒性発生率は試験により5~89%の幅があった。 SLGS戦略による治療は、 標準用量による治療と比較してGrade3~4の毒性が低かった〔メタ解析相対リスク (RR) 0.86 、 95%CI 0.75-0.98、 p<0.02、 i²= 30%〕。
7件の研究を解析したところ、 SLGS戦略による治療と標準用量による治療で治療中止率に差は認められなかった (メタ解析RR 0.96、 95%CI 0.87-1.05、 p= 0.37、 i²=50%)。
著者らは、 「系統的レビューおよびメタ解析の結果から、 固形癌の高齢患者において、 SLGS戦略による治療は、 生存率に影響を与えることなく毒性を軽減できる可能性があることを示唆している。 ただし、 結果は限られた数の前向き研究によるものであり、 緩和的化学療法を受けている高齢者におけるSLGSの効果をよりよく理解するためには、 さらなる研究が必要である」 と報告している。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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