HOKUTO編集部
2ヶ月前
下部消化管領域における実臨床の課題を専門医の視点から解説するシリーズです。ぜひご活用ください。
オキサリプラチン併用レジメンにおいては末梢神経障害が必発です。 末梢神経障害には、 投与直後から数日以内にみられる急性末梢神経障害と、 治療が継続することによって起こる遅延性の慢性末梢神経障害があります。
急性末梢神経障害は指先、 足先の感覚障害、 喉や舌先などの知覚障害が主で、 90%前後の症例でみられます。 慢性神経障害は累積投与量により、 症状は投与中止後も長期間継続することが知られています。 手足がしびれて文字が書きにくい、 ボタンがかけにくい、 飲み込みにくい、 歩きにくい等の感覚性の機能障害が、 累積投与量850mg/m²で10%、 1,020mg/m²で20%に認められます。
末梢神経障害は休薬により回復が望めるものの、 進行すると機能障害となり不可逆的になる可能性があります。 また、 末梢神経障害に対する効果的な治療や予防法は薬物療法含め確立しておらず、 現時点ではオキサリプラチンの減量や休薬を検討するしか方法はありません。
オキサリプラチンを用いた治療においては、 末梢神経障害が出る前に一旦休薬し、 その後に再投与する 「Stop-and-Go」 の有用性が報告されています。
OPTIMOX1試験はFOLFOX7 (レボホリナート+フルオロウラシル [5-FU] +オキサリプラチン) 療法のレジメンを6サイクル施行後に、 オキサリプラチンを一旦休薬し、 sLV5FU2 (レボホリナート+5-FU) 療法を12サイクル施行し、 その後にオキサリプラチンを再開してFOLFOX7療法を再度6サイクル施行するStop-and-Goの有用性を検討した試験です¹⁾。
この試験ではFOLFOX4療法を腫瘍増悪するまで施行した群と比較検討しており、 主要評価項目である無増悪生存期間 (PFS) 中央値はほぼ同等の結果であり、 有意差はありませんでした。 全生存期間 (OS) 中央値や全奏効率 (ORR) に関しても同等でした。
一方で有害事象に関してはGrade3以上の末梢神経障害が17.9%と13.3%となっており、 Stop-and-Go群で減少していました。
こうした結果を基に考えると、 オキサリプラチン投与中は累積投与量を参考に、 末梢神経障害による機能障害をきたす前にFU/LV+BEV (5-FU+レボホリナート+ベバシズマブ) (もしくはCape+BEV [カペシタビン+ベバシズマブ] やS-1+BEV [S-1+ベバシズマブ] ) の維持療法へ移行し、 適切な休薬と再開を検討しましょう。
2024年度版の『大腸癌治療ガイドライン医師用 2024年版』²⁾においてもオキサリプラチン併用療法の維持療法が明文化されています。 ガイドライン改訂の解説記事についてもぜひ参照ください。
筆者はmFOLFOX6+BEV (レボホリナート+5-FU+オキサリプラチン+ベバシズマブ) 療法の症例では6-10サイクルをめどに末梢神経障害の増悪が無い場合であっても、 オキサリプラチンの休薬を行い、 sLV5FU2+BEV (レボホリナート+5-FU+ベバシズマブ) 療法での維持療法へ移行しています。
オキサリプラチンの累積投与量850mg/㎡を参考にし、 FOLFOXでは10コースまで、 CAPOXとSOXでは6コースまでにオキサリプラチンの休薬を検討しましょう。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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