HOKUTO編集部
6日前

米国腎臓学会 (ASN Kidney Week 2026) が、 10月22~25日に米国・デンバーで開催される。 開幕プレナリーではIgA腎症の第Ⅲ相試験3本が報告され、 速報枠としてHigh-Impact Clinical Trialsと3つのLate-Breaking口演セッションが設けられた。 本稿では、 速報枠の演題から第Ⅲ相試験・承認後データ・実診療レベルの無作為化比較試験に絞って編集部が選んだ13題を、 開幕に先立って予告する。
心血管疾患の既往がないCKD G1~4の成人を対象に、 低用量アスピリンの投与と通常ケア (アスピリン非投与) を比較した、 英国の多施設プラグマティック無作為化比較試験である。 プライマリケアから約4,600例が登録された。 CKD患者は心血管リスクと出血リスクがともに高く、 一次予防としてのアスピリンの是非を十分な規模で検証した試験はこれまでなかった。 主要血管イベントの抑制と大出血のバランスが焦点となる。
血液透析または腹膜透析を受ける成人を対象に、 高用量の天然型ビタミンD3 (cholecalciferol) の経口投与と標準治療を比較した、 英国の多施設プラグマティック無作為化比較試験である。 腎臓レジストリを活用して72施設で実施され、 主要評価項目は全死亡である。 透析患者では活性型ビタミンD製剤が広く使われる一方、 天然型ビタミンDの補充がハードアウトカムに及ぼす影響は十分な規模で検証されてこなかった。
施設で血液透析を受ける成人を対象に、 3ヵ月ごとに患者報告による症状評価を行い、 その結果を医療者にフィードバックする介入と通常ケアを比較した、 オーストラリア・ニュージーランドの施設単位のクラスター無作為化比較試験である。 透析患者の症状負担は大きい一方、 日常診療では見過ごされやすいとされる。 症状の定期的な把握が12ヵ月後のQOLを変え得るかが問われる。
施設で血液透析を受ける腎性貧血患者を対象に、 HIF-PH阻害薬バダデュスタットの週3回投与と、 赤血球造血刺激因子製剤 (ESA) による標準治療を比較した米国の非盲検無作為化比較試験 (VOICE) である。 約2,100例が登録された。 バダデュスタットは国内で2020年に承認されているが、 HIF-PH阻害薬では心血管安全性への懸念も指摘されてきた。 透析日に合わせた投与でのESAとの安全性比較が焦点となる。
血液透析下の二次性副甲状腺機能亢進症患者を対象に、 注射用カルシウム受容体作動薬ウパシカルセトとプラセボを比較した2件の第Ⅲ相二重盲検無作為化比較試験 (PATH-1、 PATH-2) である。 透析終了時に週3回静注し、 iPTHが30%以上低下した患者の割合を主要評価項目とした。 ウパシカルセトは国内で2021年に承認されており、 欧米での承認に向けた臨床開発の中核となる試験である。
ドナーとのクロスマッチが陽性の高度感作患者を対象に、 IgG分解酵素imlifidaseで脱感作したうえで献腎移植を行い、 前向きに追跡した欧州の非盲検の承認後試験である。 imlifidaseは欧州で条件付き承認を受けており、 本試験はその承認条件として実施された。 移植の機会が限られる高度感作患者で、 1年後の移植腎の成績が実臨床で再現されるかが問われる。 国内では未承認である。
進行リスクのある原発性IgA腎症の成人を対象に、 BAFFとAPRILを二重に阻害する融合蛋白atacicept (週1回皮下注) とプラセボを比較した第Ⅲ相二重盲検無作為化比較試験である。 米国では2026年7月、 中間解析での蛋白尿減少に基づいて迅速承認された。 今回は2年間の腎機能を評価する最終解析が開幕プレナリーで報告され、 蛋白尿の減少がeGFRの維持につながるかが問われる。
原発性IgA腎症の成人を対象に、 APRILを選択的に阻害するヒト化モノクローナル抗体sibeprenlimab (4週ごと皮下注) とプラセボを比較した第Ⅲ相二重盲検無作為化比較試験の24ヵ月データである。 sibeprenlimabは、 米国では2025年11月、 9ヵ月時点の蛋白尿減少に基づいて迅速承認されている。 2年間のeGFRの推移が焦点となる。
原発性IgA腎症の成人を対象に、 BLyS (BAFF) とAPRILを二重に阻害する融合蛋白telitacicept (週1回皮下注) とプラセボを比較した、 中国の第Ⅲ相二重盲検無作為化比較試験の2年最終成績である。 39週時点の蛋白尿を評価した中間解析はNEJM誌に掲載され、 中国では2026年6月にIgA腎症で条件付き承認された。 104週までの腎機能の評価が報告される。
進行リスクの高い原発性IgA腎症の成人を対象に、 肝臓での補体B因子の産生を抑えるアンチセンス核酸sefaxersen (4週ごと皮下注) とプラセボを比較した第Ⅲ相二重盲検無作為化比較試験の中間解析である。 補体第二経路を標的とし、 BAFF/APRIL阻害薬とは異なる機序の治療となる。 37週時点の蛋白尿が主要評価項目である。
原発性IgA腎症の成人を対象に、 長時間作用型の抗C5モノクローナル抗体ラブリズマブ (8週ごと静注) とプラセボを比較した第Ⅲ相二重盲検無作為化比較試験の事前規定中間解析である。 ラブリズマブは国内で発作性夜間ヘモグロビン尿症などに承認されているが、 IgA腎症の適応はない。 補体終末経路の阻害が蛋白尿と血尿に及ぼす影響が報告される。
原発性IgA腎症の成人を対象に、 BAFFとAPRILを二重に阻害する改変型融合蛋白povetacicept (4週ごと皮下注) とプラセボを比較した第Ⅲ相二重盲検無作為化比較試験の中間解析である。 同薬は、 米国では迅速承認の申請が受理され、 2026年11月に審査期限が設定されている。 ❼ORIGIN 3、 ❾TELIGANと同じくBAFF/APRILを二重に阻害する薬剤で、 36週時点の蛋白尿が主要評価項目である。
自己腎のC3腎症の成人を対象とした第Ⅲ相試験APPEAR-C3Gの継続投与試験で、 経口補体B因子阻害薬イプタコパンの36ヵ月時点の中間成績である。 イプタコパンは同試験に基づき、 国内で2025年にC3腎症の適応を取得している。 希少疾患であるC3腎症で、 承認の根拠となった効果と安全性が長期に持続するかが問われる。
ASN Kidney Week 2026ではこのほか、 高齢者の血液透析導入時のバスキュラーアクセスを比較した無作為化比較試験や、 家庭血圧と透析前血圧のどちらに基づいて降圧治療を行うかを比較した試験 (HOME-BP)、 CKD患者のうつ病治療を比較した試験 (CONCORD) も発表される。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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