HOKUTO編集部
9日前
PD-L1高発現の局所進行または転移性NSCLCの1次治療における抗TIGIT抗体tiragolumab+抗PD-L1抗体アテゾリズマブ併用療法の有効性および安全性について、アテゾリズマブ単剤療法を対照に検証した第Ⅲ相プラセボ対照二重盲検無作為化比較試験SKYSCRAPER-01の最終解析結果より、 OS・PFSの有意な改善は認められなかった。スイス・Centre Hospitalier Universitaire VaudoisのSolange Peters氏が発表した。
免疫チェックポイント阻害薬は遺伝子変異のない局所進行・転移非小細胞肺癌 (NSCLC) に対する標準治療として広く使用されているが、 多くは最終的に疾患進行を示すことから、 新たな治療戦略の必要性が高まっている。
過去の第Ⅱ相試験CITYSCAPEの結果、 tiragolumab+アテゾリズマブ併用療法はプラセボに比べ、 PD-L1高発現腫瘍に対して有望な生存成績を示したことが報告されている¹⁾。 SKYSCRAPER-01試験では、 PD-L1高発現の未治療進行NSCLCを対象に、 同併用療法の有効性と安全性を検討した。
EGFR変異・ALK転座陰性で、 PD-L1高発現*かつ未治療の切除不能局所進行/転移性NSCLC患者521例を以下の2群に1 : 1で無作為に割り付けた。
主要評価項目は22C3アッセイでPD-L1発現≧50%の患者 (主解析) における全生存期間 (OS) と担当医評価による無増悪生存期間 (INV-PFS) だった。
副次評価項目はSP263アッセイでPD-L1発現≧50%の患者 (副解析) におけるOSとINV-PFS、 奏効率 (ORR)、 奏効期間 (DOR)、 安全性だった。
年齢、 性別、 アジア人割合などの患者背景は両群間で概ねバランスが取れていた。
tiragolumab群 / プラセボ群における非扁平上皮癌の割合は72.9% / 73.4%、 脳転移ありは17.2% / 16.6%、 肝転移ありは17.2% / 17.0%だった。
主解析において、 2022年3月12日をデータカットオフとしたPFS最終解析 (追跡期間中央値6.4ヵ月) におけるINV-PFS中央値は、 プラセボ群の5.6ヵ月(95%CI 4.4-7.0ヵ月) に対して、 tiragolumab群で7.0ヵ月 (同 5.6-9.8ヵ月)と数値的な改善が示されたものの、 事前に規定されたp値 (p=0.001) を満たさず、 両群で有意差は認められなかった (HR 0.78 [同 0.63-0.97]、 p=0.02)。
また、 2024年9月24日をデータカットオフとしたOS最終解析 (追跡期間中央値36.8ヵ月) では、 中央値はtiragolumab群が23.1ヵ月 (95%CI 17.7-28.8ヵ月)、 プラセボ群が16.9ヵ月(同 14.6-21.3ヵ月) であり、 OSにおいても有意な改善は見られなかった (HR 0.87 [同 0.71-1.08]、 p=0.22)。
2024年9月24日をデータカットオフとした副解析におけるINV-PFS中央値は、 tiragolumab群が8.3ヵ月(95%CI 6.2-11.3ヵ月)、 プラセボ群が5.7ヵ月(同 4.7-7.3ヵ月) だった (HR 0.86 [同 0.69-1.06] )。
また、 OS中央値はそれぞれ24.6ヵ月 (同 17.9-32.0ヵ月)、 20.6ヵ月(同 16.6-29.3ヵ月) であり(HR 0.93 [同 0.73-1.18] )、 INV-PFS・OSのいずれも、 主解析と同様に有意差は認められなかった。
2024年9月24日をデータカットオフとした主解析におけるORRは、 tiragolumab群が45.8%(95%CI 39.7-52.0%)、 プラセボ群が35.1%(同 29.4-41.3%)であり、 DOR中央値はtiragolumab群が18.0ヵ月 (同 13.6-24.4ヵ月)、 プラセボ群が14.6ヵ月(同 9.7-18.6ヵ月) だった。
治療期間中央値は、 tiragolumab群が7.5ヵ月、 プラセボ群が5.5ヵ月だった。
tiragolumab群 / プラセボ群のGrade3/4の有害事象 (AE) 発現率は41.2% / 33.8%、 Grade3/4の治療関連AE発現率は19.9% / 9.5%、 Grade3/4の免疫介在性AE発現率は16.1% / 9.9%と、 いずれもtiragolumab群の方が約7-10%程度多かった。 治療中止に至ったAE発現率は、 それぞれ16.1%/6.5%だった。
Peters氏は 「PD-L1高発現の局所進行または転移性NSCLCの1次治療において、 tiragolumab+アテゾリズマブ併用療法はアテゾリズマブ単剤療法と比較し、 PFSとOSの有意な改善を示さなかった。 ただし併用群ではPFSとOSの数値的改善が認められたことから、 NSCLCにおけるPD-L1/TIGHT標的併用療法の抗腫瘍効果の可能性が示唆された」 と報告した。
¹⁾ Lancet Oncol. 2022 Jun;23(6):781-792.
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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