寄稿ライター
3ヶ月前
こんにちは、 Dr.Genjohです。 財務省の資料から我々保険医の将来を占う短期集中シリーズ 「医師の黄昏~氷河期の到来~」。 第7回では、 今後医師が選ぶべきステージを考察します。
正解は診療所の開業医でしょうか?それとも病院勤務医でしょうか?
財務省の資料 「社会保障」 はコチラ。
全国の外来患者数は2025年にピークを迎え、 今後は減る一方であることが予想されます【図1】。
一方、 診療所の数は増え続けています【図2】。
外来患者が減る一方であるのに、 診療所は増え続けている。 当然、 診療所一か所当たりの売り上げは減るため、 医師は過剰検査・投薬などにより患者単価を上げようとします。
それらの対応も、 監査・指導により一定程度抑制されており、 今後はさらにアウトカム指標を満たさなかった場合にはディスインセンティブが課される可能性が示唆されています。
…なかなか逃げ道が見つかりませんね。 (詳しくは連載第6回)
そもそも診療所は医師一人で運営することが多く、 複数の医師で医療を提供する場合と比べて事務職員の割合が高くなります。 財務省の資料では 「非効率的」 だと指摘しています【図3】。
診療所も含めて外来機能の転換・集約を推進していくべき、 とも提言されています。 場合によっては、 今後の診療所の在り方は医療モールのようなスタイルに誘導されていく可能性もあります。
いずれにせよ、 今後診療所を新規開業することは相当リスキーであることは間違いなさそうです。
【図3】左の表にある 「MRIやCTが過剰である」 という指摘は、 主に小規模病院に向けられたものでしょう。 日本では高度医療機器を持つ必要の無い小規模病院でもMRIやCTを備えているため、 高単価なCTやMRI撮像の機会が増え、 医療費増大につながっていることを問題視していると、 筆者は読み解きます (この点の肝については後述します)
勤務医が所属する病院が主に依存する 「入院医療需要」 は低下しています【図4】。
外来需要と比べるとマシではあるものの、 入院患者数も総じて2040年までにピークを迎え、 以後減少しつづけることが見込まれています。
必然、 病床数が今後削減される方向に向かっていきます。
最近では、自民、 公明、 維新が「病床11万床を削減し医療費1兆円圧縮する改革」 に大筋合意したとの報道があったことは記憶に新しいですね。
では、 主にどのような病床が削減されていくのでしょうか?
【図5】右のグラフによると、 日本はOECD諸国で人口1000人対急性期病床数が最も多く、 既に急性期病棟の削減は直近10年で明確に進んでいます。
「それでもまだ多すぎる」 と指摘されており、 さらに回復期病棟への転換が進むとみられます。
高度急性期病床や急性期病床は基本となる入院料が高く、 算定できる加算点数が多いです。 そのため、 物理的には同じ1つのベッドを占有しているにも関わらず単価が高いです。
そこで財務省は、 急性期病床を名乗るための条件を次第に厳しくすることで、 高単価なベッドを回復期病床や慢性期病床の安価なベッドに変化させ、 医療費を削減させようとしています【図6】。
結果として、 急性期機能を保てる病院は一部の大病院に集約化。 これまで急性期病院を称していた病院は回復期機能病院として存続せざるを得なくなります。
ベッド単価の低下に耐えきれない病院は潰れてしまったり、 統廃合を余儀なくされたりするでしょう。 その過程でCTやMRIなど高価な医療を提供出来る病院も減り、 病床管理に必要だった人員も不要となっていきます。
勤務医は今後、 ①抜きんでた知識と技術を買われて急性期病院に選ばれる、 ②非常に多くの患者を抱えて回復期・慢性期機能病院で奮闘する、 ③回復期・慢性期機能病院にも選ばれず行き場を失う――の3者に分かれることでしょう。
残念ながら、 医師氷河期時代において 「この道を選べば良い」 という都合の良い回答は筆者には用意出来ません。
ただ、 どのステージを選んだとしても椅子取りゲームに勝てるようにたゆまぬ努力を続ける必要があることだけは、 間違いのない事実でしょう。
次回は保険料削減のために淘汰される存在についてお話します。
なお財務省の専門部会での検討内容を織り込んだ資料 「持続可能な社会保障制度の構築 (財政各論Ⅱ) 」 が公表されました (2025年4月23日)。 本シリーズ終了後、フォーカスアップデート版のミニ連載を予定しています。
Xアカウント : @DrGenjoh
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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