寄稿ライター
4日前

こんにちは、Dr.Genjohです。新シリーズ 「米国医療のリアル」 第3回では、 アメリカで診療報酬がインフレ負けした結果、 個人開業医に起こった現実に迫っていきましょう。
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アメリカの診療報酬を語るうえで、 医療保険の仕組みの理解は欠かせません。 アメリカには大きく分けて2つの公的医療保険があります。
65歳以上の高齢者や、 特定障害者を対象とする連邦政府の公的医療保険です。 主に入院を保障するパートA、 外来を保障するパートB、 薬剤処方を保障するパートDから構成されます。 ただし自己負担額が大きいため、 より保障範囲の広い民間保険型のパートC (+D) を利用する人も少なくありません。
低所得者のうち、 65歳以上・19歳以下・妊婦などを対象とする州政府主体の公的医療保険です。 保障内容は比較的手厚い一方で、 受給資格は厳格に定められています。
ここで、 「65歳未満の一般的な就労世代を対象とする公的医療保険」 が存在しないことに気が付いた方もいるかもしれません。 実は、 アメリカでは同年齢域は公的医療保険の対象外です。 ここで3つ目の保険、 民間保険が登場します。
65歳未満で公的医療保険の対象外となる人々の多くが加入しています。 その中心は勤務先を通じて加入する雇用主提供保険ですが、 保険料は決して安くありません。
カイザーファミリー財団による2025年度の資料²⁾によると、 年間保険料は以下の通りです。 (1ドル=160円換算)。
雇用主が大部分を負担するとはいえ、 加入者自身も以下のような金額を負担しています。

【図2】は、 Doximity社がアメリカの医師1,100人を対象に実施したアンケート調査の結果です。 「過去12か月間に、 診療報酬への懸念からメディケアやメディケイドの患者数を減らしたか?」 という問いに対して、 以下のような回答が集まりました。
つまり、 アメリカの医師の約1/3が、 公的保険であるメディケアやメディケイドに依存する診療体制に否定的な見解を示しているといえます。 第1回の記事 (リンク) でも触れた通り、 「メディケアのインフレ調整後の医師支払額は、 2001年と比較して33%低下した」 とアメリカの医師会は報告しています。
こうした状況を踏まえれば、 メディケア・メディケイド患者の比率を下げ、 民間保険患者を増やしたいと考えるのは自然な流れなのかもしれません。

【図2】では、 53%の医師が 「メディケアやメディケイド患者の数を減らすつもりはない」 と回答していました。
しかし、 【図3】では別の側面が見えてきます。
診療報酬の圧力によって、 メディケアやメディケイド患者へのサービスが低下することについて、
に達しました。
「診療報酬が低いからという理由で患者を選別したくない」 と医師が考えたとしても、 その理想だけでは経営が成り立たないという現実もまた存在します。

【図4】は、 投資に対するリターンが期待できないため、 「職員雇用やサービス拡大の延期・中止」 を余儀なくされた医師の割合です。 38%が実際に延期や中止を決定しており、 19%がそれを検討しています。

【図5】は、 現役開業医の先生にとって少々気になる内容かもしれません。 アメリカの各領域の専門医に対し、 「現在の診療報酬制度は個人開業医の減少に大きく影響したと思うか」 と尋ねたところ、
と回答しました。 つまり、 8割以上の医師が、 「診療報酬の圧力が開業医減少の一因になっている」 と認識していることになります。
そして、 この認識は単なる印象論ではありません。 アメリカ医師会によると、 医師全体に占める開業医の割合は減少傾向にあり、 2012年は60.1%だったのに対し、 2024年には42.2%へと低下しています³⁾。

アメリカで公的医療保険がインフレ負けした結果、 公的医療保険の収入に頼った医療モデルの信頼性は揺らぎ、 個人開業医の減少が続いています。
厚生労働省の資料によれば、 2023年時点でアメリカの医療費支出に占めるメディケアとメディケイドの割合は合計約39%です⁴⁾。 一方、 日本の医療は国民皆保険制度のもと、 医業収入の大部分を公的保険に依存しています。
公的保険への依存度が日本より低いアメリカでさえ、 診療報酬の圧力は医療提供体制に大きな影響を及ぼしています。 まして日本では、 その影響はさらに大きくなる可能性があります。
これから新規開業や継承開業を検討されている先生方には、 慎重な判断が求められる時代なのかもしれません。

Xアカウント : @DrGenjoh

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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