HOKUTO編集部
1ヶ月前
第79回日本食道学会学術集会が6月26日 (木) ~27日 (金) に国立京都国際会館にて開催される。 今回のテーマ 「Healthy Esophagus for Well-being 生涯健康な食道を!」 に込めた思いや学会の見どころについて、 同学術集会の会長を務める京都大学腫瘍内科教授の武藤学氏に聞いた。
――学術集会テーマに込めた思いは
武藤氏 :
飲酒は食道癌の重大なリスクファクターの1つであり、 世界保健機関 (WHO) の下部組織である国際癌研究機関 (IARC) は、 飲酒およびアセトアルデヒドを 「明確な発癌物質」 として認定しています。 しかしこの重要な情報が世間一般にはまだ十分に周知されていません。 日本食道学会はこの問題について積極的に啓発活動を行い、 社会的責任を果たしていく必要があると考えています。
飲酒を続けると食道内に前癌病変が多数発生し、 さらには重複癌の発生リスクも高まり、 治療を非常に複雑かつ困難にします。 このような状況は患者QOLを著しく損なうだけでなく、 社会全体の幸福=Well-beingにも大きな影響を与えかねません。
本会では 「個人の健康だけでなく、 社会全体のWell-being向上に貢献したい」 という思いを込めて、 今回のテーマを設定しました。
――特に注目のプログラムを教えてください
武藤氏 :
今回の学術集会では753題の演題が集まり、 多職種連携と最新の知見共有を重視したプログラムを多数用意しています。 特に、 食道癌に関連する他学会のエキスパートの先生方と最新の知見や課題を共有する以下の合同企画はいずれも本会の目玉です。
―合同企画以外の注目プログラムは
武藤氏 :
免疫チェックポイント阻害薬の登場により、 これまで切除不能だった進行食道癌の治療や、 術前・術後療法も様変わりしています。 こうした治療の進歩に関して、 外科、 放射線科、 腫瘍内科等の各領域が集い議論できるセッションを複数準備しています。
武藤氏 :
若手医師に自由な発想で将来展望を語り合ってもらう場としては、 若手セッション 「若手が描く食道癌の未来(教育、 診断、 治療、 研究) 」 を用意しています。 若手の先生方には、 既存の考え方や常識にとらわれず、 未来志向の視点を出していただきたいと思っています。
武藤氏 :
栄養・リハビリテーションに焦点を当てたセッションにも注目です。 栄養状態の悪化は外科治療のみならず、 薬物療法の成績悪化にも関連するため、 食道癌の治療成績向上において、 栄養やリハビリは非常に重要です。
本会では 「パネルディスカッション5: 食道がん治療における栄養療法・リハビリテーションの重要性」 など、 多職種・多領域の連携を促すセッションを準備しています。
武藤氏 :
さらに今回はユニークな企画として、 飲酒と並び重要な食道癌のリスク因子である喫煙に関して歯科医師との連携を深める 「特別企画2: 口腔内melanosisと口腔、 咽喉頭・食道のがん~領域を超えた診療連携を目指して~」 を用意しています。
喫煙によって歯茎が黒くなる『メラノーシス』が、 食道癌や頭頸部癌のリスクマーカーであることは歯科領域ではあまり認識されていません。 このメラノーシスに着目し、 歯科医が食道癌検診を勧めるような連携ができれば、 社会全体で癌の早期発見に大きく貢献できる可能性があります。
――日本食道学会の新たな取り組みは
武藤氏 :
食道癌・食道疾患は1領域で治療が完結せず、 内科・外科・放射線科・頭頸部外科といった他科連携、 および病理や基礎研究、 疫学研究など、 非常に幅広く、 学際的な取り組みができる領域の代表格です。 そうした学際的な領域に関心がある方たちが一堂に会し、 闊達な議論を行える環境を設けることが、 学会としての非常に重要な役割だと思っています。
その一環として、 今回は日本食道学会理事長・竹内裕也先生のご提案もあり、 新たな表彰制度として 「優秀演題賞」、 「若手奨励賞」、 「メディカルスタッフ賞」 を創設しました。 若手やメディカルスタッフの方々にも門戸を広げ、 多職種・多領域の方々が互いに高め合える機会となることを期待しています。
また、 メディカルスタッフの新規会員の方は無料で本会にご参加いただけるようにしました。
武藤氏 :
第79回日本食道学会学術集会では、 多様なバックグラウンドを持つ多職種の方々が各々の専門性を持ち寄り、 活発に意見交換できるようなセッションを数多く企画しました。 参加される皆さまには、 日々の実臨床に役立つ知識や、 将来の医療を切り拓く研究へのヒントを1つでも多く持ち帰っていただけるような、 実りある学会にしたいと考えております。
歴史と文化の都、 京都でお待ちしております。 共に学び、 食道疾患診療の未来を語り合いましょう。
開催日時 : 2025年6月26日(木)~6月27日(金)
会場 : 国立京都国際会館
会長 : 武藤学 (京都大学大学院医学研究科腫瘍内科学講座)
テーマ : Healthy Esophagus For Well-being
>> 公式サイトはこちら
早期登録期間 : 2025年5月29日(木) 23:59まで
通常登録期間 : 2025年6月27日(金) 23:59まで
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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