HOKUTO編集部
14日前

2026年5月29日~6月2日に米国臨床腫瘍学会年次総会 (ASCO 2026、 米国・シカゴ) が開催されました。 今年の乳癌領域は、 化学療法・腋窩郭清のde-escalation、 新規薬剤の併用療法、 抗体薬物複合体 (ADC) 関連の話題など、 多岐にわたって重要な演題が並びました。 本稿では特に注目を集めた5演題を紹介します。

エストロゲン受容体 (ER) 陽性HER2陰性早期乳癌の術後再発ハイリスク患者を対象に、 多遺伝子アッセイであるProsigna (PAM50) のRisk of Recurrence (ROR) scoreにより化学療法の適応を決める 「検査ガイド戦略」 を標準化学療法+内分泌療法と比較した第Ⅲ相無作為化比較試験 (非劣性試験) です。
4,153例という大規模試験で、 ROR≤60なら内分泌療法単独でも5年浸潤癌非再発生存は良好に保たれ、 Prosigna群の対照群に対する非劣性が示されました (HR 1.03、 5年差1.5%)。
従来広く用いられてきた遺伝子アッセイのオンコタイプDXでは、 化学療法を省略できるエビデンスがリンパ節転移数が3個までのデータに限られていました。 一方、 今回のProsignaでは最大9個までのリンパ節転移を含む高リスク集団でも約3分の2が化学療法を回避し得ることが示されました。
ER陽性HER2陰性早期乳癌術後治療の新たな時代が到来したと言えます。 ただし、 日本でのProsignaの保険承認がないことが残念です。
ホルモン受容体 (HR) 陽性HER2陰性PIK3CA変異陽性の進行乳癌で、 CDK4/6阻害薬+アロマターゼ阻害薬 (AI) 後の治療として、 pan-PI3KとmTORC1/2を阻害するgedatolisibにフルベストラント±パルボシクリブを併用し、 alpelisib+フルベストラントと比較した第Ⅲ相無作為化比較試験です。
gedatolisibダブレット群の無増悪生存期間 (PFS) 中央値は11.3ヵ月で、 alpelisib群の5.6ヵ月と比較し有意に延長しました (HR 0.51)。 gedatolisibトリプレット群も同等の上乗せ (PFS中央値 11.1ヵ月、 HR 0.50) を示しましたが、 CDK4/6阻害薬を加えることの意義は乏しいと考えられます。
gedatolisibは、 口内炎の頻度は高いものの、 高血糖や下痢といった毒性もalpelisibより少なく、 安全性と有効性が裏付けられました。
ただし日本は本試験には参加しておらず、 承認の見込みが現状では不透明です。
1-2個のセンチネルリンパ節マクロ転移を持つcN0のT1-3乳癌2,540例で、 腋窩郭清の省略の安全性を検証した第Ⅲ相無作為化比較試験 (非劣性試験) です。
今回、 主要評価項目の全生存期間 (OS) において、 郭清省略群の郭清群に対する非劣性が示されました。 追跡中央値60.1ヵ月時点での5年OS率は、 郭清群93.4% vs 省略群94.4%でした (HR 0.89)。 また、 省略群では患者レポートによる腕の症状や機能も良好でした。
T1-2例・乳房温存例に限られていたACOSOG Z0011試験と異なり、 T2-3も45%前後、 乳房切除例も36%前後含まれていた点は重要です。
日本の実臨床でも乳房温存例での郭清省略は浸透しつつありますが、 本試験はセンチネルリンパ節生検後の腋窩郭清省略を後押しする重要な報告です。
HR陽性HER2陰性進行乳癌で、 パクリタキセル+ベバシズマブに抗PD-L1抗体アテゾリズマブを上乗せする意義を検証した、 日本臨床腫瘍研究グループ (JCOG) 主導の第Ⅲ相無作為化比較試験です。
主要評価項目のPFS中央値はパクリタキセル+ベバシズマブ群11.2ヵ月 vs アテゾリズマブ上乗せ群12.4ヵ月と有意な上乗せ効果は示されず、 主要評価項目を達成できませんでした。 一方で、 OS中央値は31.2ヵ月 vs 39.1ヵ月と延長傾向は見られましたが、 ネガティブスタディとなりました。
高リスクの早期トリプルネガティブ乳癌 (TNBC) で、 術前ペムブロリズマブ+化学療法→術後ペムブロリズマブの周術期戦略を検証した第Ⅲ相無作為化比較試験の最終OS解析です。
追跡中央値93.8ヵ月 (約7.8年) の結果、 7年無イベント生存期間 (EFS) 率はペムブロリズマブ群78.3% vs プラセボ群69.8% (HR 0.68)、 7年OS率は85.1% vs 77.2% (HR 0.64) と、 長期でもペムブロリズマブによる明確な上乗せ効果が確認され、 効果はPD-L1発現・リンパ節転移・ステージによらず一貫していました。
本レジメンは日本でも既に高リスク早期TNBCの標準治療として使われていますが、 今回の最終OS解析によってその立ち位置はより強固になりました。
今年のASCO 2026でも、 ProsignaによるHR陽性HER2陰性術後化学療法の適応選択、 HR陽性HER2陰性PIK3CA変異の新たな標準治療登場、 センチネルリンパ節生検後の腋窩郭清の意義など、 今後の臨床に大きく影響を与えるであろう報告がいくつかありました。 一方で、 日本での承認・適応面で、 欧米諸国とのギャップを感じる点もありました。
また、 ここでは取り上げられなかった演題にも、 ASCENT-04やTROPION-Breast02のようなADC関連のアップデートもあり、 そこで交わされていたPFS2に関する議論 (試験間での定義の違い、 OSのサロゲートに本当になるのか?など) が大変興味深かったです。 このように結果の発表だけでなく、 データ解釈の議論がされるのが学会の良い点だと改めて感じました。
【ハイライト】ASCO2026特集|領域別 注目演題レポート&解説まとめ(更新中)
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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