MDアンダーソンがんセンター感染症科 松尾貴公
12ヶ月前
Analysis of Prosthetic Joint Infections Following Invasive Dental Procedures in England

研究デザイン
ケースクロスオーバーおよび時間的傾向解析を用いたコホート研究
研究対象
2011年~2017年にPJIで入院した患者のうち、 歯科記録が利用可能な9,427例
対象地域
イギリス (対象人口5,500万人)
主要評価項目
PJI入院の3ヵ月前 (ケース期間) と、 それ以前の12ヵ月間 (コントロール期間) の侵襲的歯科処置の有無
対象患者のプロファイル
対象となった9,427例の平均年齢は67.8歳、 男性が52%、 女性が48%であった。
感染部位は膝関節が33.6%、 股関節が25.3%、 その他の人工関節が2.8%、 感染部位が不明な症例が38.4%であった。
感染の原因菌は黄色ブドウ球菌が53.3%、 口腔連鎖球菌が9.4%、 その他の連鎖球菌が4.9%を占めていた。
侵襲的歯科処置とPJIの関連性
PJI入院の3ヵ月前 (ケース期間) でそれ以前の12ヵ月間 (コントロール期間) よりも低く、 統計的にも有意差が認められた (IRR 0.89、 95%CI 0.82-0.96、 p=0.002)。
また、 個別の歯科処置 (スケーリング、 抜歯、 根管治療) においても、 PJIとの有意な関連性は確認されなかった。

侵襲的歯科処置において、 高リスク患者には感染性心内膜炎の予防を目的とした抗菌薬予防投与が確立されています。 一方、 人工関節を有する患者に抗菌薬予防投与を行うべきかどうかは、 長年にわたり議論の的となってきました。
特に、 米国歯科協会 (ADA) が2014年に実施したシステマティックレビューでは、 「一般的に人工関節を有する患者に対して、 歯科処置前の抗菌薬予防投与は推奨されない」 と結論付けられました¹⁾。 しかし、 この勧告は米国整形外科学会 (AAOS) の支持を得られませんでした。 このため、 歯科医の中には過失とみなされることを恐れ、 引き続き抗菌薬予防投与を行う例が多く見られました。
本研究では、 侵襲的歯科処置とPJI発生の間に正の関連性を支持する証拠がないことが示されました。 この結果は、 侵襲的歯科処置前の抗菌薬予防投与は推奨されないという結論をさらに強く支持するものとなりました。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。