寄稿ライター
12ヶ月前
こんにちは、 Dr.Genjohです。 人口減少などを背景に、 厚生労働省は2029年ごろには医師需給が均衡し、 その後はいわゆる 「医師余り時代」 が到来すると推測しています。 医師偏在の問題もあり一概には言い切れませんが、 石川県はどうなのでしょう。 県が置かれた現状を認識し、 未来を先読みすることで取るべき対策を考えてみましょう。
シリーズ1回目は、 石川県の人口推移と入院患者数の推移を見ていきます。 総務省が発表した石川県の2022年の年間人口増減率は▲0.67%。 47都道府県中19位と比較的健闘していますが、 人口減少は避け得ないものとなっています(総務省の発表資料はコチラ)。
厚生労働省のワーキンググループ (2023年3月) で石川県が示した 「地域医療構想の進め方」 によると、 2020~2024年にかけ、 県全体の人口は約15%減少し、 100万人を切ります。 石川中央では減少率約9%にとどまる一方、 能登北部は50%以上減少するとの推計です。
石川中央では人口減少を上回る高齢化の影響もあり、 入院患者数は2024年時点で、 むしろ増加すると推計されています。 ただ、 能登北部は既に人口の半数が高齢者であり、 人口減少に伴って入院患者数は減少する一方です。
上の表を見て下さい。 厚労省の2022年医療施設 (動態) 調査によると、 石川県の人口10万人当たり病床数は1480.6床。 全国平均の1194.9床を大きく上回っており、 病床数の削減が進むと考えられます。 今後、 入院需要が伸びる石川中央では入院病床はある程度維持されると考えられますが、 能登北部においては入院病床の削減は必定といえるでしょう。
次に、 代表的な疾患ごとの入院需要を見てみましょう。 前述の 「地域医療構想の進め方」 によると、 県内では、 肺炎>脳血管障害>骨折>虚血性心疾患>悪性新生物の順で入院需要があり、 2015年~2045年の間はおおよそ変化しません。
石川中央ではいずれの疾患の入院需要もしばらく増加していきます。 ただ、 その他の地域の影響を受けるため、 県全体の入院需要は2023年ごろを境目として減少に転じます。 悪性新生物に関しては2030年ごろ、 虚血性心疾患に関しては2045年ごろに現在の需要を下回ることが示唆されます。
外来通院や施設入院、 在宅診療の患者さんもいるため、 入院患者数の推計だけですべての医療需要を語れるわけではありません。 しかし、 石川中央を除く地域、 特に能登北部における入院病床数は削減が見込まれるため、 病院や有床診療所における医師の需要は下がっていくでしょう。
需要減少の地域でも、 相対的に入院数が維持されやすいのは肺炎、 脳血管疾患、 骨折といった高齢者疾患であると考えられます。 あるいは入院病床数が減った分、 その他の診療形態に主軸が変化していくかもしれません。
引き続きこのシリーズで石川の今後を共に見据え、 考えて頂けますと幸甚です。
Xアカウント : @DrGenjoh
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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