亀田総合病院
6ヶ月前
亀田総合病院 腎臓高血圧内科
薬剤性腎障害は薬剤による臓器障害の⼀つで、 腎臓への⾎流の減少や⽷球体・尿細管への直接的な毒性により発⽣する。
薬剤性腎障害の2割は超重症 (死亡もしくは腎死)であり、 ⾼齢者、 脱⽔、 糖尿病、 動脈硬化、 腎機能が低下した患者への薬剤使⽤は特に注意が必要とされている。
薬剤性腎障害は以下のように分類される。
▼患者因子
年齢 (60歳以上)、 肥満、 CYP3A4の遺伝⼦多型
▼患者の病態
体液量減少、 糖尿病、 腎機能障害の併存、 ⼼不全、敗⾎症
▼治療内容
薬剤投与量、 投与速度、 腎毒性物質の併⽤
▼抗ウイルス薬
バラシクロビル、 アシクロビル
▼非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs)
ロキソプロフェン、 ジクロフェナク
▼抗菌薬
レボフロキサシン
▼血行動態に関与する薬
レニン・アンジオテンシン系 (RAS) 阻害薬、 フロセミド
▼その他
アロプリノール、 シクロスポリン、 ファモチジン
アレルギー性の薬剤性腎障害は、 誰に起きやすいかを評価することが難しく、 予防が困難である。
▼ポイント
▼注意が必要な薬剤
▼診断
腎⽣検がゴールドスタンダードだが、 腎⽣検ができない場合があること、 結果が出るまでに⼀定の時間 (2~3⽇) が必要なことから、 診断的治療を検討する状況は多々ある。
間質性腎炎に⾁芽腫を認めることがある。 ⾁芽腫性間質性腎炎は、 ⾮炎症性/⾃⼰免疫性疾患よりも薬剤性の頻度が⾼いことが知られている。
▼ポイント
⾎清学的検査で以下の条件を満たす場合、 薬剤性⾎管炎が疑われる。
▼注意が必要な薬剤
セフォタキシム、 ミノサイクリン
benzylthiouracil、 carbimazole、 methimazole、 プロピルチオウラシル
アダリムマブ、 エタネルセプト、 インフリキシマブ
クロザピン、 thioridazine
アロプリノール、 D-penicillamine、 ヒドララジン、 levamisole、 フェニトイン、 サラゾスルファピリジン
▼診断
診断に際しては早い段階から薬剤服⽤歴を聴取し、 早急に尿検査、 ⾎液検査を⾏う。
⽤量依存性の中毒性の薬剤性腎障害は腎機能に⽐して⽤量が多いために起きることが多い。 したがって、普段使い慣れていない薬を使⽤する際は、 腎機能と⽤量を確認することが重要である。
▼NSAIDs
▼プロトンポンプ阻害薬
プロトンポンプ阻害薬の使⽤はCKDの発症・進展と関連している可能性があるため、 CKDに対する⻑期使⽤は⾒直す必要がある
▼ビタミンD製剤
ミルク・アルカリ症候群 (カルシウム・アルカリ症候群) では⾼⽤量のビタミンD製剤、 カルシウム製剤、 NSAIDsなどが処⽅されることが多い。 特にビタミンD製剤 (エルデカルシトール) には注意が必要
▼カルシニューリン阻害薬
カルシニューリン阻害薬を⻑期投与する場合は、 ⾎液検査で明らかな腎機能障害が認められない場合でも、 投与開始後定期的 (初回は2~3年後) に⽣検を⾏い、 腎毒性の有無を評価することが望ましい
▼分子標的薬 (抗VEGF抗体、 EGFR抗体)
ベバシズマブ投与例において蛋⽩尿が認められ、腎⽣検を実施したところ、 メサンギウム融解、 内⽪細胞腫⼤、 ⾚⾎球破壊像、 基底膜の⼆重化が観察される。近年は、 VEGF抗体関連糸球体障害の病理診断名は、 thrombotic microangiopathyでなく、 glomerular microangiopathyとも表現される。
▼免疫療法 (抗PD-1抗体、 抗PD-L1抗体)
免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) を使⽤するとimmune-related adverse events (irAEs)が起きる。 腎臓に起きるrenal irAEの多くは、 尿細管間質性腎炎である。 ICIを使用すると、 TT細胞の増加を抑制しづらくなり、 薬剤の曝露により間質性腎炎が起きやすいと考えられている。 実際に、 ICI使⽤時の PPIの使⽤は腎障害の危険因⼦になることが知られている。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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