海外ジャーナルクラブ
4日前

京都大学大学院腫瘍生物学分野の越智陽太郎氏らの研究グループは、 新規に急性骨髄性白血病 (AML) と診断された1,563例からなるeCHROMAコホートを対象に、 ATAC-seqを用いたクロマチンアクセシビリティ解析によりAMLを分類できるか検討した。 その結果、 AMLはクロマチンアクセシビリティプロファイルに基づき16のサブグループに分類された。 各群は、 ドライバー変異、 分化段階、 遺伝子発現、 DNAメチル化、 スーパーエンハンサープロファイルにそれぞれ固有の特徴を示し、 ゲノム分類とは独立した予後との関連や、 特定の薬剤に対する感受性との関連も示唆された。 研究成果はNature誌に掲載された。
本研究は、 スウェーデン (1997~2022年) と日本 (2011~22年) で登録された新規診断AMLなど1,563例を対象とした大規模研究です。 ただし、 解析対象はATAC-seqに適した生存凍結腫瘍細胞を確保できた症例に限られており、 選択バイアスの可能性があります。 また、 スウェーデンでは全国AML登録、 日本では参加施設から京都大学のバイオバンクに集積された症例が用いられており、 登録期間や症例集積の仕組み、 診療体制が異なる点にも留意が必要です。
急性骨髄性白血病 (AML) は、 未熟な骨髄芽球が制御を失って増殖する侵襲性の高い血液癌である。 遺伝子変異が病態・腫瘍間の不均一性・臨床転帰に大きな影響を及ぼすことは示されてきたが、 これらに対するエピゲノム変化の役割については検討が十分に進んでいない。
新規にAMLと診断された1,563例からなるコホート (eCHROMA) を対象に、 ATAC-seq*でクロマチンアクセシビリティを解析した。 遺伝子変異・トランスクリプトーム・DNAメチル化・ヒストン修飾のマルチオミクス解析に加え、 単一細胞ATACシークエンスと単一細胞マルチオミクス解析を実施し、 得られた分類は独立コホートで検証された。
本研究は治療介入を伴わない分類・記述を目的とした解析であり、 治療の割付や介入による臨床転帰の比較は行われていない。
AMLはクロマチンアクセシビリティプロファイルに基づき16のサブグループに分類された。 各サブグループは固有のドライバー変異・分化段階・遺伝子発現・DNAメチル化・スーパーエンハンサープロファイルを示し、 臨床転帰との関連も認められた。 単一細胞ATACシークエンスでは各サブグループの白血病細胞が共通のクロマチンアクセシビリティプロファイルを共有しており、 サブグループ特異的なエピゲノム指紋が本分類の基盤にあることが示唆された。
各サブグループは造血の鍵となる転写因子の活性に駆動される固有の遺伝子制御ネットワークを有し、 サブグループ特異的なスーパーエンハンサーが中心的な役割を果たしていた。 単一細胞マルチオミクス解析では、 クロマチンアクセシビリティおよび遺伝子発現と連動した分化軌道の破綻が認められた。
ATACサブグループは、 ゲノム分類とは独立した予後効果を有していた。 強化化学療法を受けた患者では、 サブグループ間で全生存に有意差を認め (5年全生存率はサブグループAで85.1%、 Oで12.2%)、 European LeukemiaNet (ELN) のリスク分類にATACサブグループを加えると、 予後予測の指標であるC-indexが有意に改善した (平均ΔC-index 0.036~0.039)。 また、 生体外 (ex vivo) の薬剤スクリーニングでは、 特定の薬剤感受性との関連が示された。 治療介入による前向きな検証は行われていない。
著者らは、 新規診断AML 1,563例のクロマチンアクセシビリティプロファイルにより16のサブグループが同定され、 各群が固有のドライバー変異・分化段階・遺伝子発現・DNAメチル化・スーパーエンハンサープロファイルを示したという結果から、 マルチオミクスデータと組み合わせたATACベースのクロマチンプロファイリングがゲノミクスを超えたAMLの病態理解に資する可能性を示したとしている。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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