寄稿ライター
1年前

こんにちは、 Dr.Genjohです。 シリーズ 「医師減給時代」 第4回のテーマは 「地域枠って意味あるの?」 です。

結論から言うと、 地域枠を設定することにより、 医学部卒業後の地域への定着割合は着実に伸びています【図1】。
地域枠以外の医師では、 卒業した大学のある地域に根付いてくれる確率は地元出身者でも75%強、 他県出身者では40%弱と、 低いと言わざるを得ません。
それに比べ、 地域枠の医師が地元に根付く確率は90%弱と明確に高く、 医師数の地域間偏在に対する効果はあると言って良いでしょう。

地域枠が設定される2008年 (平成20年) 以前は、 医師が多い都道府県(人気のある地域)の若手医師が増加し、 医師が少ない都道府県(人気のない地域)の若手医師は減少する一方でした。
ところが、 地域枠が設定された2008年に入学した医学部生が卒業する2014年 (平成26年) を境にこの傾向は変化しました【図2】。
2020年 (令和2年) 時点では、 医師が少ない地域における若手医師数の増加は、 医師が多い地域の若手医師数を上回っています。 地域枠の設定は一定の効果を挙げたといって差し支えないでしょう。

しかし、 地域枠の設定 (2008年) から医学部を卒業するまでに6年かかり、 卒後9年間は地域医療機関への従事が必要となります。 これらを足し合わせると2023年になります。
つまり、 地域枠で入学し約束をたがえず15年間地域に根ざした層が、 地域医療の従事から解放されて場所を問わず従事可能となり始めたのは、 ごく最近のことなのです。 地域医療機関への従事年限を終えた後にも、 そのまま同じ地域にどれだけ残留してくれるかは今後慎重に見守る必要があるでしょう。


医学部の定員は大多数を占める恒久定員と、 少数の臨時定員で構成されています【図3・図4】。 今後、 「医師余り抑制=新規医師養成数の削減」 を目的とし、 臨時定員は削減もしくは消滅するでしょう。
厚生労働省は 「地域における医師の確保を図るため、 恒久定員を含む医学部定員に、 地域の実情に応じて地域枠の設置・増員を進めていく必要がある」 と述べています。 将来的には恒久定員に占める地域枠の割合はどんどん増えていくでしょう。
つまり、 「医師になった後、 自分の好きな場所で働く権利」 は今後プラチナチケット化する可能性があります。

昨今、 地域枠離脱の問題が巷間を賑わせています。
日本国憲法第22条第1項においては、 「何人も、 公共の福祉に反しない限り、 居住、 移転及び職業選択の自由を有する」 と規定されています。 これを根拠として、 地域枠の設定は居住、 移転及び職業選択の自由を侵すものではないか、 との議論も見受けられます。
地域枠の存在が無かった頃には、 医学部に入れば働く場所は自由に決められたのに、 今後はその権利がプラチナチケット化し、 「世代間格差が発生している!」 という批判が起こることももっともでしょう。

ただ、 冷静に全体を見つめた時、 地域枠医師の途中離脱が発生すると、 地域間医師偏在の問題が解消せず、 新規医師養成数の削減ができません。 すると 「医師余り」 はさらに進行し、 医師全体の待遇の悪化につながります。
中年~老年の医師は引退までの残り年数が少ないため、 その影響を比較的受けづらいと考えられます。 医師全体の待遇の悪化による悪影響を最も大きく受けてしまうのは、 地域枠医療従事を離脱することを考える若年医師層、 これから医師人生をスタートする層なのです。
「医師全体のために個人が殉じよ」 と声高に言うことは出来ません。
しかし医師という職業の持続可能性を考慮すると、 地域枠医師が地域医療従事を遵守することが必要であることは間違いない事実なのです。

Xアカウント : @DrGenjoh
厚生労働省 : 第2回医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会 (2024年2月26日) 「医学部臨時定員と地域枠等の現状について」
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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