HOKUTO編集部
3ヶ月前

導入化学療法後に病勢進行が認められないHER2陽性転移性乳癌において、 抗HER2抗体トラスツズマブ+ペルツズマブによる維持療法への、 HER2選択的チロシンキナーゼ阻害薬ツカチニブ上乗せの有効性および安全性について評価した第Ⅲ相無作為化比較試験HER2CLIMB-05の結果から、 PFSが有意に改善した。 米・Sarah Cannon Research InstituteのErika Hamilton氏が発表した。
HER2陽性転移性乳癌の標準1次治療は、 タキサン系薬剤+トラスツズマブ+ペルツズマブ (HP) による導入化学療法 (THP) 後、 維持療法としてHPを投与する。 しかし、 多くの患者で病勢進行が認められる。
既報のHER2CLIMB試験では、 既治療のHER2陽性転移性乳癌に対するカペシタビン+トラスツズマブへのツカチニブの併用による有効性が示されている¹⁾²⁾。
HER2CLIMB-05試験の対象は、 THPによる導入化学療法 (4~8サイクル) 後に病勢進行が認められなかったHER2陽性の転移性乳癌患者だった。 治療は、 許容できない毒性、 病勢進行、 同意撤回、 または試験終了まで継続された。
654例が以下の2群に1 : 1で無作為に割り付けられた。
プラセボ群からツカチニブ群へのクロスオーバーは認められなかった。
主要評価項目はRECIST v1.1に基づく担当医師評価による無増悪生存期間 (PFS) だった。 副次評価項目は全生存期間 (OS)、 盲検下独立中央判定 (BICR) によるPFS、 脳転移に対するPFS (CNS PFS) などだった。
年齢中央値、 人種などの患者背景は両群でバランスが取れていた。 ホルモン受容体陽性はツカチニブ群が51.5%、 プラセボ群が53.7%、 脳転移の既往または存在ありはそれぞれ12.6%/12.2%、 De novoの転移性疾患が69.6%/68.9%だった。
データカットオフ (2025年9月5日) 時点における担当医師評価によるPFS中央値は、 ツカチニブ群が24.9ヵ月 (95%CI 21.3ヵ月-NR) で、 プラセボ群の16.3ヵ月 (同 12.6-18.7ヵ月) と比較し有意な延長を認めた (HR 0.641 [95%CI 0.514-0.799]、 p<0.0001)。 またサブグループ解析の結果、 事前に規定された全てのサブグループにおいて、 ツカチニブ群のプラセボ群に対する優位性が一貫して認められた。
BICRによるPFSの結果は、 担当医師評価によるPFSと概ね一貫していた (HR 0.654 [95%CI 0.517-0.828])。
OSのデータはimmatureだが、 ツカチニブ群で改善傾向が認められた (HR 0.539 [95%CI 0.303-0.957]、 p=0.0320)。
CNS PFSは、 ITT集団でのHRが0.846 (95%CI 0.616-1.162) であった。 また探索的解析として、 ベースライン時に脳転移を有する患者におけるCNS PFS中央値は、 プラセボ群の4.3ヵ月に対してツカチニブ群が8.5ヵ月と、 約4.2ヵ月の延長が示された (HR 0.719 [95%CI 0.406-1.273])。
Grade 3以上の治療中に発現した有害事象 (TEAE) は、 ツカチニブ群が42.3%、 プラセボ群が24.4%だった。 ツカチニブ群で頻度の高いTEAE (全Grade) は下痢 (72.7%)、 悪心 (33.1%)、 ALT上昇 (28.2%) であり、 Grade 3以上のALT上昇は13.5%だった。 治療中止に至ったTEAEはツカチニブ群が13.8%、 プラセボ群が4.6%だった。
Hamilton氏は 「本試験の結果から、 HER2+転移性乳癌患者の維持療法におけるHP療法へのツカチニブ上乗せが、 有力な選択肢となり得ることが実証された」 と報告した。
本発表に関して、 がん研有明病院乳腺センター医長の尾崎由記範先生にご解説いただきました。

第Ⅲ相HER2CLIMB-05試験では、 HER2陽性転移性乳癌に対する維持療法としてのツカチニブの有効性が示された。 HP+ツカチニブによる維持療法は標準的な選択肢になると思われる。
ただし、 トラスツズマブ+ペルツズマブ+タキサン(HPD)による導入療法後の維持療法として、 ホルモン受容体陽性例に対しては、 SABCS 2024で発表された第Ⅲ相PATINA試験の結果から、 CDK4/6阻害薬パルボシクリブ+抗HER2療法+内分泌療法併用の有効性が示されている。
PATINAレジメンとHER2CLIMB-05レジメンの比較試験は存在しないものの、 ホルモン受容体陽性に対してはPATINAレジメン、 ホルモン受容体陰性に対してはHER2CLIMB-05レジメン、 という使い分けが想定される。
なお、 いずれのレジメンも現時点で本邦未承認である。
¹⁾ N Engl J Med. 2020 Feb 13;382(7):597-609. Epub 2019 Dec 11.
²⁾ Ann Oncol. 2022 Mar;33(3):321-329. Epub 2021 Dec 23.

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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