アボットメディカルジャパンは3月11日､ 非弁膜症性心房細動による脳卒中のリスクを低減する左心耳閉鎖術の新たなデバイス ｢Amulet左心耳閉鎖システム｣  (以下 Amulet) を発売した｡ 本製品は2024年10月に製造販売承認を取得している｡

開発の背景

脳卒中リスクを低減する左心耳閉鎖術は重要な治療選択肢

非弁膜症性心房細動は脳卒中を引き起こす重大な危険因子であり､ 心房細動の患者では抗凝固薬 (OAC) の服用などにより脳卒中を予防することが重要である｡

左心耳閉鎖術は､ 非弁膜症性心房細動による血栓が形成される ｢左心耳｣ (左心房にある袋状の構造物) を閉鎖することによって､ 脳卒中のリスクを低減する｡ 開心術でなく､ 鼠径部から静脈にカテーテルを挿入し閉鎖デバイスを留置する低侵襲の手術である｡

同閉鎖術は､ 1回の手術で脳卒中のリスクを低減し､ OACを中止できる可能性があることから､ 開心術や薬物療法などの代替療法を求める患者において重要な選択肢となる｡

新たなデバイスAmuletの既存デバイスに対する非劣性が検証されている

Amuletは新規の左心耳閉鎖デバイスで､ この手術を必要とする患者に新たな選択肢を提供する｡

既存デバイスを対照とした海外臨床試験 ｢Amulet IDE (NCT02879448) ｣ において､ Amuletデバイス群は有意に高い左心耳閉鎖率を示した (術後45日時点 98.9%､ 術後12ヵ月時点 99.4%) ¹⁾｡ 術後3年時のOAC中止率も96.2%と有意に高い傾向が示された²⁾｡

また、本試験における主要評価項目である主要作用機序評価項目 (経食道超音波検査 [TEE] による術後45日時の左心耳有効閉鎖率)､ 主要安全性評価項目 (術後12ヵ月時の手技関連合併症､ 全死亡､ または大出血 [BARCタイプ3以上] の複合評価項目) および主要有効性評価項目 (術後18ヵ月時の虚血性脳卒中または全身性塞栓症の複合評価項目) において､ Amuletデバイス群の対照群に対する非劣性が検証されている²⁾｡

Amuletの特徴と可能性

従来のデバイスが不適合より左心耳閉鎖術を行えなかった患者の選択肢に

Amuletの大きな特徴は､ 独自の2層構造にある｡ 左心耳の解剖学的構造は多様だが､ Amulet はその2層構造によってさまざまな形状･サイズの左心耳に対応しており､ 従来のデバイス技術では閉鎖が困難であった左心耳に対しても閉鎖術を行える可能性がある｡ また､ 左心耳の入口部を密閉することで術後のリークを防ぎ､ 高い閉鎖性を実現している｡

アボットメディカルジャパン合同会社プレスリリース（25/03/11）より引用

デバイスはニチノールワイヤーを編んで作られている｡ ニチノールは形状記憶の特性を持つ金属であり､ デリバリー時にカテーテル内に収納されているデバイスが留置時には元の ｢記憶された｣ 形状に戻る｡ デバイスの形状は左心耳の開口部を閉鎖するように設計されている｡ サイズラインナップは幅広く､ そのランディングゾーン (留置領域) は11~31mmをカバーしている｡

出典

1. Ellis et al., Incidence and Clinical Outcomes of Peri-Device Leak After Transcatheter LAAO. HRS. 2022.
2. Circulation. 2021 Nov 9;144(19):1543-1552.