HOKUTO編集部
2年前
新企画「臨床Q&A」が始まりました。 臨床医の皆さんが日々疑問に思うことをアプリ上のアンケート機能を用いて問いていきます。 ご意見、ご感想をお待ちしております。
HOKUTOユーザーの医師129名に聞きました
アンケート結果:NK₁受容体拮抗薬+5-HT₃受容体拮抗薬+DEXの「3剤併用療法」が最多で、 次点はオランザピンを含む「4剤併用療法」となりました。
解説医師:山本 駿先生 (国立がん研究センター 中央病院 頭頸部・食道内科)
がん薬物療法の治療関連有害事象として、 しばしば管理に難渋する有害事象の一つが悪心・嘔吐といった消化器症状である。 制吐薬の治療開発はがん薬物療法と平行する形で進められ、 現在では各抗がん薬の催吐性リスクに応じた、 適切な制吐療法が確立されている。
催吐性リスクが90%以上の高催吐性薬剤 (例:シスプラチン含有レジメン、AC療法) を使用する場合、以前は5-HT₃受容体拮抗薬+デキサメタゾン+NK₁受容体拮抗薬の3剤併用療法が推奨されていた¹⁾。 しかし、 もともと抗精神病薬であったオランザピンの制吐効果がランダム化比較試験で証明された²⁾³⁾結果、 ASCOのガイドラインでは、 オランザピン+NK₁受容体拮抗薬+5-HT₃受容体拮抗薬+デキサメタゾンの「4剤併用療法」が推奨されている⁴⁾。 注意すべき点として、 オランザピンは有害事象として高血糖があり糖尿病を有する症例では不適であること、 海外ではオランザピンの投与量が10mg/日で有効性が証明された²⁾が、 国内では5mg/日で有効性が証明された³⁾⁵⁾ことである。
なお、 催吐性リスクが30-90% (中催吐性) の薬剤 (例:FOLFOX、 FOLFIRI) を使用する場合は、 5-HT₃受容体拮抗薬+デキサメタゾンの2剤併用療法が推奨されている¹⁾⁴⁾。 なおプラチナ系薬剤であるカルボプラチンはAUC 4以上の場合、 高催吐性レジメンに準じた3剤併用の制吐療法を行うよう推奨されている¹⁾⁴⁾。 そのような中、 中催吐性レジメンに対する2剤併用療法にオランザピンを上乗せすることで制吐効果が高まる可能性が示唆されており⁶⁾、 2剤併用療法で制吐効果が不十分な場合ではオランザピンの上乗せも検討されうる。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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