【臨床Q&A】高催吐性レジメンに対する支持療法は?
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HOKUTO編集部

1年前

【臨床Q&A】高催吐性レジメンに対する支持療法は?

新企画「臨床Q&A」が始まりました。 臨床医の皆さんが日々疑問に思うことをアプリ上のアンケート機能を用いて問いていきます。 ご意見、ご感想をお待ちしております。

今週の臨床Q&A (オンコロジー)

高催吐性レジメンに対する支持療法、 どれを選択することが多いですか?

HOKUTOユーザーの医師129名に聞きました

(実施期間:2023年3月1日〜3月14日)
【臨床Q&A】高催吐性レジメンに対する支持療法は?
アンケート結果:NK₁受容体拮抗薬+5-HT₃受容体拮抗薬+DEXの「3剤併用療法」が最多で、 次点はオランザピンを含む「4剤併用療法」となりました。

専門医のコメント

解説医師:山本 駿先生 (国立がん研究センター 中央病院 頭頸部・食道内科)

ASCOガイドラインでは「4剤併用療法」が推奨されています

がん薬物療法の治療関連有害事象として、 しばしば管理に難渋する有害事象の一つが悪心・嘔吐といった消化器症状である。 制吐薬の治療開発はがん薬物療法と平行する形で進められ、 現在では各抗がん薬の催吐性リスクに応じた、 適切な制吐療法が確立されている。

 

催吐性リスクが90%以上の高催吐性薬剤 (例:シスプラチン含有レジメン、AC療法) を使用する場合、以前は5-HT₃受容体拮抗薬+デキサメタゾン+NK₁受容体拮抗薬の3剤併用療法が推奨されていた¹⁾。 しかし、 もともと抗精神病薬であったオランザピンの制吐効果がランダム化比較試験で証明された²⁾³⁾結果、 ASCOのガイドラインでは、 オランザピン+NK₁受容体拮抗薬+5-HT₃受容体拮抗薬+デキサメタゾンの「4剤併用療法」が推奨されている⁴⁾。 注意すべき点として、 オランザピンは有害事象として高血糖があり糖尿病を有する症例では不適であること、 海外ではオランザピンの投与量が10mg/日で有効性が証明された²⁾が、 国内では5mg/日で有効性が証明された³⁾⁵⁾ことである。

 
【臨床Q&A】高催吐性レジメンに対する支持療法は?
ASCOガイドライン (J Clin Oncol 2020; 38: 2782-2797) を基に作図

なお、 催吐性リスクが30-90% (中催吐性) の薬剤 (例:FOLFOX、 FOLFIRI) を使用する場合は、 5-HT₃受容体拮抗薬+デキサメタゾンの2剤併用療法が推奨されている¹⁾⁴⁾。 なおプラチナ系薬剤であるカルボプラチンはAUC 4以上の場合、 高催吐性レジメンに準じた3剤併用の制吐療法を行うよう推奨されている¹⁾⁴⁾。 そのような中、 中催吐性レジメンに対する2剤併用療法にオランザピンを上乗せすることで制吐効果が高まる可能性が示唆されており⁶⁾、 2剤併用療法で制吐効果が不十分な場合ではオランザピンの上乗せも検討されうる。

参考文献

  1. 日本癌治療学会. 制吐薬適正使用ガイドライン 第2版. 2018年.
  2. Navari RM, Qin R, Ruddy KJ, et al. Olanzapine for the Prevention of Chemotherapy-Induced Nausea and Vomiting. N Engl J Med. 2016 Jul 14;375(2):134-142.
  3. Hashimoto H, Abe M, Tokuyama O, et al. Olanzapine 5 mg plus standard antiemetic therapy for the prevention of chemotherapy-induced nausea and vomiting (J-FORCE): a multicentre, randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3 trial. Lancet Oncol. 2020 Feb;21(2):242-249.
  4. Hesketh PJ, Kris MG, Basch E, et al. Antiemetics: ASCO Guideline Update. J Clin Oncol. 2020 Aug 20;38(24):2782-2797.
  5. Yanai T, Iwasa S, Hashimoto H, et al. A double-blind randomized phase II dose-finding study of olanzapine 10 mg or 5 mg for the prophylaxis of emesis induced by highly emetogenic cisplatin-based chemotherapy. Int J Clin Oncol. 2018 Apr;23(2):382-388.
  6. Tan L, Liu J, Liu X, et al. Clinical research of Olanzapine for prevention of chemotherapy-induced nausea and vomiting. J Exp Clin Cancer Res. 2009 Sep 23;28(1):131.
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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