HOKUTO編集部
3ヶ月前
2024年度より、 食道外科専門医の新規/更新申請の資格条件が大幅に変更された。 第78回日本食道学会では、近畿大学上部消化管 (食道・胃) 外科主任教授の安田卓司氏が、 その背景や変更点について解説した。
2019年の食道癌手術件数は2004年に比べ約1.3倍*に増加している。 その一方で、 日本食道学会外科系会員数はこの15年間、 ほとんど増えていない。
また食道癌患者は65~84歳**で最も多く、 日本の総人口は減少しても65歳以上の人口は今後30年以上変わらないと推算されていることから、 食道癌診療に携わる食道外科専門医数の育成は重要な課題である。 こうした背景を踏まえ、 今回、 食道外科専門医制度について見直しが検討されたという。
本邦における食道外科専門医認定施設の多くは大都市中心に分布されており、 現時点で茨城、 福井、 愛媛、 沖縄には認定施設が1施設もない。 また、 県内に食道外科専門医が1人しか在籍していない都道府県もある。 このため、 全県に認定施設を配置し、 専門医の数を底上げすることが重要課題とされている。
食道外科専門医の資格取得者は40~50代がピークで、 若年層 (30代) の新規取得者割合が少ない点も課題の1つであるという。
都道府県別の食道癌罹患数は、 東京都で2,987例、 徳島県で111例と、 26.9倍もの差がある*。
安田氏は 「これほどの差が生じていると、 申請資格として公平性が保たれていないと考えられる。 患者数の地域格差を考慮し、 症例数が少ない地域でも食道外科専門医取得を目指せる条件にする必要があった」 と説明した。
食道癌患者数の地域偏在性を考慮し、 食道外科専門医の新規申請に必要な診療経験点数が50点から40点に引き下げられた。
縦隔郭清を伴う縦隔鏡下食道切除術の術者点数が0.5点から1点に引き上げられた。
ただし、 頸部からの上縦隔操作および腹部からの中下縦隔操作を合わせて1症例分の1点として算定し、 両操作で術者が異なる場合は、 2症例を合わせて 1 症例分の1点として算定することとされた。
新規申請における胸部食道切除術の術者要件として必要な15点の対象術式のうち、 定型的な縦隔郭清を伴う縦隔鏡下食道切除術を10点まで認めることとされた (更新申請時は点数制限なし)。
手術法*および郭清の範囲に関わらず、 新規/更新申請における胸部食道切除術の術者または手術指導医要件として認めることとされた。
食道胃接合部癌に対して定型的な縦隔郭清を伴う食道切除術を施行した症例は、 新規/更新申請における胸部食道切除術の術者または手術指導医要件として認めることとされた。
会員要件としての日本食道学会会員継続期間は 「5年以上」 から 「3年以上」 に変更された。
新規申請には食道科認定医取得済であることが必須条件であり、 これまでは認定医取得後翌年以降でしか食道外科専門医の新規申請ができなかった。 しかし、 今後は食道科認定医と食道外科専門医の同時申請を認める方向で調整を進めているとされた。
なお、 新規申請条件を緩和することで懸念される専門医の 「質」 は、 一次審査での研修・研究業績および手術ビデオ審査の評価基準を維持し、 二次審査においてテーマの異なる5ブースを回る口頭試問で臨床的実力を評価することで担保するという。
更新申請に必要な診療経験点数の総数は50点から30点に引き下げ、 胸部食道切除術の術者または指導医としての手術要件は15点から10点に引き下げることとされた。
更新申請における資格条件の緩和について、 安田氏は 「これまで更新要件のハードルが高く、 食道外科専門医は未更新者数が多かった。 資格を一度取得したら維持しやすいよう、 確実に更新できる基準に変更することで未更新者数を削減し、 新規申請数の増加にもかかわらず更新申請が行われずに専門医数が増えないという悪循環を是正していきたい」 と解説した。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。