HOKUTO編集部
7ヶ月前
根治切除後の高リスク筋層浸潤性尿路上皮癌の術後療法としての抗PD-1抗体ニボルマブは、 第Ⅲ相無作為化比較試験CheckMate 274の初期結果に基づき、 既に国内でも承認されている。 今月開催された欧州泌尿器科学会 (EAU 2024) では、 同試験の全生存期間 (OS) の解析結果が初めて報告され、 OSにおいても有意な改善を認めたことが示された。
CheckMate 274試験では、 高リスク筋層浸潤性尿路上皮癌の術後療法において、 ニボルマブ単剤をプラセボを対象に検証。 すでに主要評価項目のintention-to-treat (ITT) 集団およびPD-L1発現レベルが1%以上の集団における無病生存期間 (DFS) に加えて、 副次評価項目の1つである非尿路上皮無再発生存期間 (NUTRFS) の有意な改善が示され、 本邦でもニボルマブ術後療法が承認されている。
今回は、 もう1つの副次評価項目であるOSの解析結果を含む、 長期成績の解析結果が報告された。
今回の追加解析においても、 DFS、 NUTRFS、 および無遠隔転移生存期間 (DMFS) において、 ニボルマブはプラセボに対して一貫して有意な改善を示した。
ITT集団
HR 0.71 (95%CI 0.58-0.86)
PD-L1≧1%
HR 0.52 (95%CI 0.37-0.72)
ITT集団
HR 0.76 (95%CI 0.61-0.96)
PD-L1≧1%
HR 0.56 (95%CI 0.36-0.86)
OSサブグループ分析
ITT集団における事前に規定されたサブグループにおいても、 ニボルマブは一貫してプラセボに対する優位性が示された。
筋層浸潤尿路上皮癌に対するニボルマブの術後治療は、 本研究の主要評価項目であるDFSの有意な延長を示し、 国内でも承認され、 実臨床でも使用されている。 しかしながら、 患者にとって術後補助療法の真のエンドポイントはOSであるとも考えられ、 今回、 副次評価項目ではあるが、 OSにおいてニボルマブがプラセボに対して有意な延長を示せたことは意義深い。
本試験では主要評価項目の1つである腫瘍細胞におけるPD-L1発現≧1%の集団のDFSにおいて、 既に統計学的な有意差が示されている。 そして、 今回OSにおいても同様にPD-L1発現の集団における良好な結果が示された。
しかしながら、 PD-L1発現<1%の集団における解析において効果がないとは言えず、 PD-L1発現のバイオマーカーとしての臨床的有用性には問題点が残る。 今後、 PD-L1発現をTPS、 CPS、 ICなど、 どの基準で判定すべきか、 もしくはどの抗体で測定するのか、 などさらなる研究が必要と考える。
最後に、 注目すべきポイントとして、 原発巣の部位別のOSのサブグループ解析の結果である。 既に発表されたDFSの結果では、 上部尿路上皮癌は、 腎盂も尿管においてもHRの点推定値が1を超えたことから、 PMDAが公表する最適使用推進ガイドラインにおいて、
「CDDP等の白金系抗悪性腫瘍剤による治療が可能な場合にはこれらの治療を優先する」
と記載されており¹⁾、 ニボルマブの使用が制限されている。
しかしながら、 今回発表されたOSサブグループ解析の結果では、 症例数は少ないものの、 腎盂癌と尿管癌のHR点推定値は、 それぞれ0.67と3.93とかけ離れており、 今後、 腎盂癌と尿管癌の治療戦略を区別すべきなのか、 これらの腫瘍のバイオロジーを含め検討していく必要があると考えられる。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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