亀田総合病院
27日前
亀田総合病院リウマチ・膠原病・アレルギー科の専門医が担当する新連載をお届けします。 リウマチ・膠原病診療に関わるさまざまな疑問とそのTipsについて、 分かりやすく解説します (第5回解説医師 : 葉末亮先生)。
痛風は急性単関節炎をきたすcommonな疾患です。 ピロリン酸カルシウム結晶沈着症 (Calcium Pyrophosphate Deposition Disease ; CPPD) やハイドロキシアパタイト沈着症などとともに 「結晶性関節炎」 として知られています。
痛風では 「尿酸ナトリウム結晶」、 CPPDでは 「ピロリン酸カルシウム二水和物」、 ハイドロキシアパタイト沈着症ではリン酸カルシウムの一種である 「ハイドロキシアパタイト」 がそれぞれ結晶として沈着します。
ほとんどの哺乳類では血中尿酸濃度の基準値は0.5-2.0mg/dLですが、 ヒトなどの霊長類では4-6mg/dLと高めになっています。 これは霊長類が尿酸を分解する酵素 「ウリカーゼ」 の活性を失った結果です。 このため、 ヒトにおいては尿酸がプリン体の最終代謝産物となります。
尿酸の血中飽和濃度は6.8mg/dL (37℃、 pH7.0) 程度ですので、 これを超えると尿酸が血管外に漏れ出て結晶として沈着することになります。 しかし、 第1趾 (母指) 付近の体温は35℃程度とされており、 より低濃度の6.0mg/dLで結晶が析出します。 このことからも第1趾が痛風の好発部位である理由が理解できると思います。
その他、 足根骨・足関節・膝関節なども頻度の多い部位とされています。
痛風における最大のリスク因子は高尿酸血症であり、 これは以下の図1からも明らかです。
また、 図2に示すその他のリスク因子も、 間接的に尿酸上昇に関わるものが多くみられます。
性別もリスク因子になり、 男性は女性に比べて痛風の発症リスクが高いとされています。 男性性がリスク因子になる理由は、 女性ホルモンが尿酸産生低下および排泄促進作用を有するため、 尿酸値に男女差があることが関係します。 なお、 閉経後にこの差は縮小するとされています。
典型的な発作の症状は急性単関節炎です。 発作開始から24時間以内に疼痛が最大になり、 1-2週間程度で自然軽快します。 関節は腫脹・熱感を伴い、 関節周囲の皮膚には発赤がみられます。 発作は夜間の方が起こりやすいと言われています。
また、 慢性多関節炎に進行すると、 関節リウマチなどとの鑑別が重要になります。
臨床経過が典型的である場合は、 検査なしでも診断可能です。 穿刺液からの結晶検出の感度は85%、 特異度は100%とされていますので、 尿酸結晶が検出された場合はほぼ確定診断と言ってもよいでしょう。
しかし、 化膿性関節炎や偽痛風が合併している場合もあるため、 穿刺液が採取できた際はグラム染色や培養検査なども提出しておきましょう。 このほか、 Dual-energy CTによる画像診断も一般的になりつつあります。
治療の中心は、 コルヒチン (1mgを経口投与し、 1時間後に0.5mg追加) ±非ステロイド系抗炎症薬 (NSAIDs) ±プレドニゾロン (PSL) (30-35mg/日を3-5日) ±ステロイド関節注射となります。 特にコルヒチンは発作開始から12時間以内の使用で有効性が高くなるため、 早期治療が重要です。
それぞれの治療に優先順位はなく、 組み合わせて用いることも可能です。
①発作の予防 ②尿酸値の管理 の2点が重要になります。
発作予防としては、 コルヒチン0.5mg/日が一般的です。 使用不可であれば低用量NSAIDs (例 : ナプロキセン100mg×3/日) や低用量PSL (5mg/日や10mg隔日投与など) でもよいでしょう*。
尿酸値が低下してからも半年程度は痛風発作の頻度は減らないため、 発作予防は3-6ヵ月程度継続します。
尿酸値の管理としては、 アロプリノール、 フェブキソスタット、 トピロキソスタット、 などのキサンチンオキシダーゼ阻害薬が第1選択です。 尿酸排泄促進薬はあくまでキサンチンオキシダーゼ阻害薬の補助的な役割となり、 使う機会は多くありません。
前述の通り、 体の部位によって6mg/dLで結晶が析出するため、 目標値はこれ以下にすることが一般的です。 痛風結節がある場合などには5mg/dLと、 さらに目標値を下げる推奨をしているガイドラインもあります。
痛風管理の治療選択においては、 以下も参考にされるとよいかと思います。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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