海外ジャーナルクラブ
4ヶ月前
Quirozらは、 常染色体優性アルツハイマー病 (ADAD) の患者を対象に、 APOE3クライストチャーチ (APOE3 Ch) 変異体のヘテロ接合性が認知機能障害の発症年齢に与える影響をコホート研究で検討した。 その結果、 APOE3 Ch変異体のヘテロ接合性は認知機能障害の発症を遅延させることが明らかとなった。 本研究はNew England Journal of Medicineで発表された。
APOE3 Christchurch Heterozygosity and Autosomal Dominant Alzheimer's Disease. N Engl J Med. 2024 Jun 20;390(23):2156-2164. PMID: 38899694
"in this population(この対象群に限って) "という記載が、 余計にアルツハイマー病全体での効果を期待させます。
APOEとPSEN1の変異は、 アルツハイマー病のリスクを変化させる。 PSEN1 E280A変異体による常染色体優性アルツハイマー病患者において、 ホモ接合体*¹保有者では認知機能障害の遅延が報告されているが、 APOE3 Ch変異体のヘテロ接合体*²が認知機能障害の発症年齢に与える影響は明確ではない。
コロンビアのアンティオキア地方に住むPSEN1 E280A変異保有者1,077例
1,077例の中からAPOE3 Ch変異体のヘテロ接合体保有者27例を特定し、 APOE3 Ch変異体を有しない者と認知機能障害および認知症の発症年齢を比較した。 また、 2例に脳画像検査、 4例に剖検を行った。
APOE3 Ch変異体ヘテロ接合体保有者 : 52歳
APOE3 Ch変異非保有者 : 47歳
脳画像検査を受けたAPOE3 Ch変異ヘテロ接合体保有者2例では、 アルツハイマー病に典型的に関与する脳領域の代謝活性が比較的保たれていたことが示された。
¹⁸F-flortaucipir-PETを受けた1例では、 この一族での典型的な年齢で認知障害を発症したPSEN1 E280A変異保有者と比較し、 タウ蓄積が限定的であった。
APOE3 Ch変異ヘテロ接合体を有する4例において剖検が実施され、 APOE3 Ch変異非保有者と比較して前頭葉で脳アミロイド血管症の病理学的特徴が少ないことが示された。
著者らは、 「臨床データから、 常染色体顕性遺伝性アルツハイマー病の有病率が高い家系でAPOE 3Ch変異ヘテロ接合体を有する人では、 認知障害の発症が遅延することが裏付けられた」 と報告している。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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