【NEJM】中等症~重症の血友病B、ウイルスベクターを用いた遺伝子治療で第IX因子の維持を確認
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海外ジャーナルクラブ

2年前

【NEJM】中等症~重症の血友病B、ウイルスベクターを用いた遺伝子治療で第IX因子の維持を確認

【NEJM】中等症~重症の血友病B、ウイルスベクターを用いた遺伝子治療で第IX因子の維持を確認
Chowdaryらは, 中等症・重症の血友病Bの患者10名を対象に, 肝臓指向性アデノ随伴ウイルス (AAV) を用いた遺伝子治療FLT180a の安全性と有効性を検討する多施設共同非盲検第Ⅰ/Ⅱ相試験を実施. その結果, FLT180aの低用量投与で正常範囲の第Ⅸ因子の維持が認められたが, タクロリムスの併用またはグルココルチコイドによる免疫抑制が必要なことが明らかとなった. 本研究は, NEJM誌において発表された. 

背景

FLT180a (verbrinacogene setparvovec) は, 合成キャプシドと機能獲得タンパク質を用いた肝臓指向性AAV遺伝子治療で, 血友病B患者の第Ⅸ因子レベルを正常化させる.

研究デザイン

  • 対象:重症または中等症の血友病B患者 (第Ⅸ因子レベルが正常値の2%以下).
  • 全患者にタクロリムスの併用またはグルココルチコイドの投与が行われた.
  • 主要評価項目:安全性と有効性. 26週目の第Ⅸ因子の値で評価した.

研究結果

10人の患者に3.84×1011vg/1kg, 6.40×1011vg/1kg, 8.32×1011vg/1kg, 1.28×1012vg/1kgの4種類のFLT180aベクターゲノム投与量のいずれかが投与された.

有効性評価

  • 投与後,全例に用量依存的に第Ⅸ因子活性の上昇がみられた.
  • 追跡期間中央値27.2カ月時点で, 第Ⅸ因子製剤の予防投与を再開した1名を除く全例でFactor Ⅸ活性の持続が確認された.
  • データカットオフ日時点で, 5名の患者の第Ⅸ因子レベルは正常 (範囲:51~78%) , 3名の患者のレベルは23~43%, 1名の患者のレベルは260%であった.

安全性評価

  • 報告された有害事象のうち, 約10%がFLT180aに, 約24%が免疫抑制に関連していた.
  • FLT180aに関連する有害事象では, ALT値の増加が最も多く認められた.
  • ALT値の増加は, タクロリムスを長期投与された患者ではグルココルチコイドの漸減後も遅れて増加した.
  • 第Ⅸ因子高値の患者では動静脈瘻血栓症の重篤な有害事象が1例に発生した.

結論

  • FLT180aの低用量投与で正常範囲の第Ⅸ因子の維持が認められたが, タクロリムスを併用または併用せずにグルココルチコイドによる免疫抑制が必要であった.

原著

Chowdary P, et al, Phase 1-2 Trial of AAVS3 Gene Therapy in Patients with Hemophilia B. N Engl J Med. 2022 Jul 21;387(3):237-247. PMID: 35857660

👨‍⚕️監修医のコメント
最近、 第2相試験や今回のように1/2相試験結果が5大雑誌に掲載されることが多くなりました. 編集者側が注目される治療を先取りでどんどん掲載している感がありますが, 長期アウトカムのように時間による評価も必要な場合があるので注意が必要ですね. 
こちらの記事の監修医師
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HOKUTO編集部
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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