HOKUTO編集部
3ヶ月前

日本のがんゲノム情報管理センター (C-CAT) における全国規模のリアルワールドデータベースから抽出した膵腺房細胞癌 (PACC) 患者のゲノムプロファイルと治療成績との関連性について、 既報の膵管腺癌 (PDAC) 患者データをヒストリカルコントロールとして評価した後ろ向きコホート研究の結果、 PACCのゲノムプロファイルはPDACと大きく異なり、 55.6%で標的治療となり得る遺伝子異常が認められた。 京都府立医科大学消化器内科学の土井俊文氏が発表した。
PACCは膵癌の1~2%を占める稀な疾患である。 PDACとは異なる臨床的・免疫組織学的特徴を示し、 PACCのゲノムプロファイルおよび治療成績に関するエビデンスはいまだ少数例の報告に留まっている。
本研究は、 PACCに関する最大規模の後ろ向きコホート研究となる。 対象は、 2019年6月~24年12月にC-CATに登録され、 CGP検査の結果を有するPACC患者169例であり、 同データを2次的に用いて、 既報のPDAC患者2,568例のデータ(2019年6月~21年12月)¹⁾をヒストリカルコントロールとして、 PACCのゲノムプロファイルと治療成績との潜在的な関連性を評価した。
評価項目はPACCとPDACのゲノムプロファイルの差などであった。
患者背景としてCGP検査時の年齢中央値は64歳、 男性が68.6%と多く、 ECOG PS 0-1が167例と大部分を占めていた。 用いられたCGP検査の内訳は、 FoundationOne CDxが63.9%、 OncoGuide NCCオンコパネルが16%、 およびFoundationOne Liquid CDxが14.8%などであった。
使用された主な1次化学療法はゲムシタビンベースが71例、 フッ化ピリミジンベースが90例、 プラチナベースが66例 (うちFOLFIRINOX療法が57例)、 イリノテカンベースが62例 (うちプラチナ併用が60例) であった (一部重複あり)。
PACCのゲノムプロファイルについてヒートマップで検討した結果、 BRCA2変異が17.2%と大きな割合を占めており、 BRAF/RAF1融合遺伝子も多く認められた。 一方、 KRAS変異に関しては、 PDACでは90%以上で認められる傾向にあるものの、 PACCでは15.4%と明らかな差異が認められた。 またKRAS変異とBRAF/RAF1融合遺伝子は相互排他的な関係であった。
また、 PACCとPDACのゲノムプロファイルの差をさらに検討するために、 偽発見率 (FDR) <0.05を有意水準としてボルケーノプロットで検討した結果、 PDACと比べてPACCでは、 TP53変異およびKRAS変異の頻度が低く、 BRCA2変異、 BRAF/RAF1融合、 CTNNB1変異、 NF1変異、 PTEN変異、 および腫瘍遺伝子変異量 (TMB) 高値 (TMB-High) の頻度などが高かった。
TMB-Highは全体の5.8%、 マイクロサテライト不安定性高値 (MSI-High) は0.6%であった。 TMBの中央値は3mut/Mbであり、 この値をカットオフとしてTMBを高値・低値に二分した上で遺伝子変異との関連を検討した結果、 KRAS変異陽性例ではTMBが低く、 BRCA2変異およびPTEN変異の陽性例ではTMBが高い傾向が認められた。
これまで、 PACCへの標的治療に関する報告は限られていたが、 今回の研究において、 PACC患者の55.6%で標的治療の候補となり得る遺伝子異常が認められた。
土井氏は 「本研究において、 PACC患者の55.6%で標的治療の候補となり得る遺伝子異常が認められ、 CGP検査を検討する意義が示唆された。 今後は、 コンパッショネートユース (患者申出療養) の活用やバスケット試験への組み入れが課題である」 と報告した。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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