irAEガイド
2年前
監修: 京都大学医学部附属病院 山内一郎先生
免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) による1型糖尿病は、 ごく稀な有害事象であるが、 対応が遅れた場合に致死的となるため、 認識しておくことは重要である。
📊臨床試験のメタアナリシスの報告¹⁾
抗PD-1あるいは抗PD-L1抗体:0.43%
抗CTLA-4抗体単剤療法:さらに稀
📊実臨床での本邦からの報告
抗PD-1抗体 ニボルマブ:0.5%²⁾
抗PD-1抗体 ペムブロリズマブ:1.4%³⁾
💡高血糖の典型的症状
口渇、多飲、多尿、体重減少が多いが、 高齢者では明らかでないこともあり注意を要する。
💡ケトアシドーシスに至った場合
意識障害、嘔吐・腹痛などの消化器症状も伴うことが多い。 比較的急速に発症するため、 基本的に血糖値は高値となるが、 過去2~3カ月の血糖値の平均を反映するHbA1cは必ずしも高値とならない。
臨床像は本邦と欧米で大きく異なるため、 注意が必要である。 以下、 日本人の研究を引用するが、 好発時期はICI開始から121日後と比較的遅く、 ケトーシスあるいはケトアシドーシスは大部分の症例で認め、 抗GAD抗体や抗IA-2抗体などの自己抗体は陰性、 アミラーゼやリパーゼの上昇を認めることもある⁴⁾。
一部の症例ではインスリン分泌能が枯渇しないものの、 基本的にはインスリン自己注射の継続を要する。
✅血糖値 ✅HbA1c ✅尿定性検査*
✅抗GAD抗体
なお、 糖尿病治療中の患者の場合、 irAE発現時に血糖値での判断が分かりにくくなる。 通院している医師あるいは医療機関に情報提供し、 協力を依頼するとより安全である。
極めて稀な副作用であるが、 診断治療が遅れると致死的となることもあり、 注意が必要である。 定期的に通院していても、 発症から2週間程度の間にも重篤となることがあり、 セルフチェックも重要である。
口渇、多飲、多尿、体重減少など典型的症状や、 原因が分からない吐き気や腹痛の出現時には速やかに主治医に相談すべきである。
✅血糖値 ✅尿定性検査 (特に糖、ケトン)
あわせて月1回HbA1cを測定しておくと、 緩徐に悪化する症例を見落とすリスクを減らすことができる。
臨床的に使用可能な発症予測因子はまだないが、 早期発見のために尿試験紙の自己購入は提案してもよい。
週2日程度起床時にセルフチェックしてもらい、 尿糖2+以上が出れば連絡してもらうという方法がある。
疑う際の基準はガイドラインなどにも示されていないが、 糖尿病の既往がなく新たに血糖値が200mg/dL以上となった際には、 食後測定であっても疑っておいた方が安全である。
糖尿病に対する治療中の症例では、 明確な誘因なく高血糖やHbA1c上昇を認めた際に疑うこととなるため、 主治医の印象が重要であることは想像に難くない。 疑った後の対応の例を以下に示した。
緊急入院:生理食塩水の大量投与とインスリンの経静脈投与を開始。 ケトアシドーシスの治療に関しては成書を参照されたい。
入院加療を推奨:ケトアシドーシスには至らずとも、 高血糖と尿ケトン陽性を認めるケトーシスであった場合、 インスリン分泌能が数日以内に枯渇することがあり、 入院下での脱水補正とインスリン皮下注射でのコントロールを推奨。
帰宅も可だが迷うなら入院:ただし、 帰宅時にも、 インスリン自己注射と自己血糖測定を導入するぐらい慎重を期した方が良い。
全身状態が安定している際の治療については、 持効型インスリン製剤と超速効型インスリン製剤を用いた 「強化インスリン療法」 を行うことになるが、 調整には慣れが必要であるため、 経験がなければ専門医に委ねてほしい。 なお、 全身状態及び血糖コントロールが安定すれば、 一般的にICIを用いた治療は再開可能である。
irAEとしての1型糖尿病は、 遅発性に起こるため、 ICI投与終了後であっても注意を要する。
症例によっては劇症型と呼ばれるような数日単位でのインスリン分泌能の枯渇を生じることもあり、 HbA1cは必ずしも高値とならない。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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