「寄り添うこと、 育むこと」 神奈川県警友会けいゆう病院・津村医師 (part2)
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インタビュー

1ヶ月前

「寄り添うこと、 育むこと」 神奈川県警友会けいゆう病院・津村医師 (part2)

 「寄り添うこと、 育むこと」 神奈川県警友会けいゆう病院・津村医師 (part2)
誰しも立ち止まり、 迷い、 そして踏み出した人生の瞬間がある。 医師の原点や転換点にフォーカスするインタビュー企画 「Doctor’s Career」。 今回は、 神奈川県警友会けいゆう病院小児科部長で小児アレルギーセンター長の津村由紀先生に話を聞いた。  (全3回の第2回) 

>>第1回はコチラ

探求

アレルギーを専門に

小児科医として経験を重ねるうちに、 より“反応が見える医療”を求めるようになった。

「新生児は集中治療により1~2日の短期間で劇的に回復します。 児童精神の治療介入では月~年の単位で緩やかに患者さんと家族が変化していくのに寄り添います。 どちらも惹かれる領域でしたが、 社会心理的なアプローチをしながらも治療の手ごたえを感じられる領域で仕事がしたいと思いました」

そうして選んだのがアレルギー診療だった。

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アレルギー診療の教育プログラムについて日本アレルギー学会で発表 (2015年ごろ)

国立成育医療研究センター (NCCHD) のアレルギー科に勤務し、 食物アレルギーやアトピー性皮膚炎、 喘息の子どもたちを毎日診療。 臨床・研究・教育が密接に結びつく現場で、 難治の重症児と家族への行動療法的アプローチ、 研究計画やデータの扱い方、 また医療者への専門診療教育に参加し、 幅広く学んだ。

医学ではない 「医療」 に触れる

この頃から、 自然科学としての医学ではない 「医療」 にも関心を持つようになった。

東京大学CBEL (医療倫理学分野) 主催の 「生命・医療倫理セミナー」 で医療倫理と研究倫理を、 京都大学 (現・名古屋大学医学教育センター錦織宏先生) 主催の 「現場で働く指導医のための医学教育学プログラム」 において医学教育を、 東京医科歯科大学 (現・東京科学大学 医療政策情報学分野 伏見清秀先生) 主催の「PDCA医療クオリティマネージャー養成プログラム」では医療の質・クオリティマネジメントを、 それぞれ学んだ。

倫理を学び 「違う景色」 を知る

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「夫は広い視野と活動を示唆してくれます」 川崎市立川崎病院で2015年ごろ

内科医の夫 (川崎市立川崎病院勤務) が研究倫理、 医療政策など所属にとらわれずに広い視野で自由に勉強を続ける姿にも影響された。 「生命・医療倫理セミナー」 に参加し、 患者やメディア、 製薬会社、 医療者など立場の異なる人々と議論を重ねた。

「同じ出来事でも、 立場が違えば見え方も正しさも変わる。 それを体感できたのは大きな学びでした」

小学生の時の入院や、 大学時代のフィールドワークでの経験 (第1回参照) も、 この気付きの大きな糧となった。

「医学教育」 を実践する

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少人数で集中的に医学教育を学ぶ。 京都大学で2016年ごろ (一部画像処理をしています)

国立成育医療研究センターアレルギー科では、 小児科医に対する食物アレルギー研修プログラムの開発に注力し、 成果は学会発表や論文化した。

「教育を感覚で行うのではなく、 理論として理解したものを実践する機会となりました」

その後、 独学だった医学教育について、 京都大学の医学教育学プログラムで系統的な理論を学び教育哲学にもふれた。

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NCCHDで学んだ専門分野を生かして専攻医に教える (2016年)

一貫して心がけていることは、 「それぞれのニーズにあった内容で、 より普遍的なことを伝える」 ことだ。 指導では 「今役立つ知識」 よりも、 「将来の成長を支える教え方」 を意識する。 細かな専門知識を詰め込むのではなく、 「どうやって情報を集め、 どのように答えに行きつくのか」 を考えさせる。

「小児科やアレルギーの専門的な内容はすぐに古くなる。 でも、 情報を探して考えるという力は一生使えます。 そこを育てることが大切だと思います」

医療の 「質」 を自問自答

アレルギー診療を追求するうちに、 「自分が行う診療は“良い医療”と呼べるのか。 医療の質とは何か」 という問いが生まれた。

アレルギー疾患の一部は機能障害や症状が進行しないため、 価値観によっては 「治らなくてよい」 という患者もいるからだ。

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写真はイメージです

そんな時、 「クオリティマネジメント」 の講座に答えを求めた。 「副作用がなく治る」 というのは医療の質の一部であり、 「治らなくてよい」 という選択肢もあることを教わった。

患者や家族の価値観を反映した医療こそが“質の高い医療”の前提である、 という診療スタイルに自信を持てるようになった。

「『つらい治療をそこまで頑張らなきゃいけないの?』と疑問に思う患者さん、 親御さんもいます。 医療者は“治すことが正義”と思いがちですが、 私は『患者や家族の価値観を最大限反映させ、 効果と負担のバランスをとった医療こそが、 その人の幸せにつながる』という考えに行き着きました」

医療と教育、 根底にあるのは 「寄り添うこと」

臨床の現場でも教育の場でも大切にしているのは 「寄り添う姿勢」 だ。

「医療も教育も、 相手の中にある力をどう引き出すかが大切です。 答えを与えるのではなく、 気づきを促す。 時間はかかっても、 その方が深く残ると思っています」

医療の質を問い、 倫理を学び、 教育を理論として築いていく。

その探求の先にあるのは、 変わらない信念―― 「人の成長に寄り添う医療」 である。

(>>続く)

プロフィール

 「寄り添うこと、 育むこと」 神奈川県警友会けいゆう病院・津村医師 (part2)
千葉県出身、 東京・神奈川育ち。 東京女子医科大学卒。 慶應大学病院小児科で初期研修後、 東京都済生会中央病院、 国立病院機構東京医療センター、 国立成育医療研究センターアレルギー科、 川崎市立川崎病院を経て、 2016年より現在の職場に在籍。
専門分野はアレルギー疾患 (食物アレルギー、 アトピー性皮膚炎、 気管支喘息)、 医学教育、 医療の質 (意思決定支援)。
日本小児科学会専門医・認定指導医、 日本アレルギー学会専門医。

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HOKUTO編集部
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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