海外ジャーナルクラブ
16日前
Scheijmansらは、 画像診断で急性虫垂炎と診断された合併症がない成人患者を対象に、 抗菌薬治療および虫垂切除術の安全性と有用性を比較することを目的として、 複数のデータベースよりこれらを比較したランダム化比較試験 (RCT) の個別患者データを抽出し、 メタ解析を実施した。 その結果、 抗菌薬治療は虫垂切除術に代わる治療法として安全かつ有効であり、 最初の1年間でおよそ2/3の患者が虫垂切除術を回避できた一方、 虫垂結石を伴う場合には合併症リスクが増加することが明らかとなった。 本研究はLancet Gastroenterol Hepatolにて発表された。
急性虫垂炎は 「虫垂結石があれば手術、 なければ保存加療」 ということでしょう。
Adult Appendicitis Score (AAS)
画像診断で急性虫垂炎と確定された成人患者において、 抗菌薬治療が虫垂切除術に代わる安全な選択肢であることがRCTで示されている。 しかし、 患者の組み入れ基準や評価項目はRCTによって大きく異なる。
本研究では、 個別患者データと統一された評価項目を用いて、 抗菌薬治療および虫垂切除術の安全性と有効性を比較評価した。
PubMed、 EMBASE、 Cochraneのデータベースより抽出した6件のRCTの対象患者2,101例*について、 一般化線形混合モデルを用いて一段階法でメタ解析を実施した。
主要評価項目は、 初回抗菌薬投与または虫垂切除術後1年時点における合併症発現率であった。 なお、 合併症はJCOG術後合併症規準 (Clavien-Dindo分類) により試験間で統一され、 さらに、 軽度の合併症 (グレード1-2または同等) と重度の合併症 (グレード3-5または同等) に分類された。
重要な副次評価項目は、 抗菌薬群における1年時点の虫垂切除率であった。 また、 転帰は虫垂結石の有無で層別化された。
主要評価項目である1年時点の合併症発現率は以下のとおりで、 両群で有意差は認めなかった。
OR 0.49 (95%CI 0.20-1.20)、 リスク差 -4.5%㌽ (95%CI -11.6-2.6%㌽)
重要な副次評価項目である、 抗菌薬群における1年時点の虫垂切除率は33.9%であった。
画像診断で虫垂結石が認められた患者における1年時点の合併症発現率は、 抗菌薬群が虫垂切除術群と比べて有意に高かった。
OR 2.82(95%CI 1.11-7.18)、 リスク差13.2%㌽ (95%CI 2.3-24.2%㌽)
また、 抗菌薬群における1年時点の虫垂切除率は、 虫垂結石を有する患者が48.7%、 虫垂結石を有さない患者が30.6%であった。
著者らは 「画像診断で急性虫垂炎と診断された成人患者に対し、 抗菌薬は虫垂切除術に代わる安全かつ有効な治療法であり、 最初の1年間でおよそ2/3の患者が虫垂切除術を回避できた。 一方、 虫垂結石を伴う患者では、 抗菌薬による合併症リスクが有意に増加し、 およそ半数で虫垂切除術が施行された。 これらの結果は、 治療選択における共同意思決定 (SDM) に寄与する重要なデータとなる」 と報告している。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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